老舗の生き抜き方⑥
福島県酒造組合さんが運営する学校「県清酒アカデミー」で1時間ほどの講演をすることになりました。
震災以来応援している「福島の酒」ですし、聞き手は醸造を志している若い方ばかりだそうですので、一生懸命お話ししてきたいと思っています。
その原稿が準備できましたので、弊ブログでも公開して行きたいと思います。長いので8回に分けてUPしています。
御題は、老舗の生き抜き方というものをお話しせよ、ということしたので、そういう方面の話しをさせていただきます。
本来自分で「老舗」と自称するのは僭越な話しではあるのですが、他に適当な日本語がありませんので、使うことにいたしまして、つまりは浅草の、すき焼き屋ですとか、天麩羅屋ですとか、鰻屋ですとか、蕎麦屋ですとか、そういう仕事を永年して来た店が、時代の変化や危機をどのように乗り切ってきたか、をお話ししてみたいと思います。
本日は、その第6回です。おつきあいいただけましたら、幸いです。
<以下講話本文>
(時代に対応するだけではなくて~未来の歴史を創る)
やはり時代の変化に対応することは大事です。
浅草は戦後の復興に当たって、「テレビの時代」が到来したことに対応しなかったため、最近までかなり長期の衰退期を経験しました。
戦後人々は、もう一度芸能の殿堂・娯楽の殿堂を再建しようとしますが、それを果たせない内、時代が変わってしまいました。昭和30年代辺りから、浅草は寂れ始めます。テレビ時代を迎えているのに、まだ昔の浅草を追いかけていたから、です。
私が子供の頃の話しですが、非常に苦しい時代がありました。「再建」「復興」では×で、新しい時代を創らないといけなかったわけです。そのことは、今日是非お伝えしておきたいと思います。
衰退した説明として、①テレビと②東京の城南方向への拡大が挙げられています。戦後の若者のカルチャーは、浅草のような古い土地でなく、新宿・渋谷・六本木など城南方面の新鮮な繁華街で育ちましたので、テレビのせいでエンタメ産業が打撃を受けたのと合わせて、浅草は急激な地盤沈下の時代を迎えました。
この時代のことを思い返してみますと、私の直感では、①②の説明以上になんか、もっと加速度的に「場末化」した感覚がありました。貧すれば鈍するで、苦し紛れに馬券売り場を誘致したのも失敗でした。「ウインズ浅草」が出来た六区は、競馬目当ての客のみが集中する光景となりました。場末っぽい雰囲気が漂い、夜間は7時になると人通りも疎らになってしまう始末でした。私が子供の頃です。
一度トップに昇って、その後でトップの座が揺らぐとかなりキビしい、そんな感じがですね、感覚だけで言って申し訳ないですが、いたします。時代に対応しないとダメですよ、ということと、もう1点、トップからいったん落ちますと、かなり苦しい思いをすることになりますよ、ということの2点を、ここで皆さんにお話ししておきたいと思います。
ついでに現在の話しをいたしますと、浅草が「芸能の殿堂」「娯楽の殿堂」の地位に戻れていない、という意味では同じ状況です。今浅草は再生した、とは言いつつも、日本一の盛り場だった頃とは違って国際観光地としての再生です。たしかに再生は果たしましたが、問題は在ると、私は思っています。
だって観光ってのは、しょせんは「スポット見物」で、名物・名所以外にお金の波及が少ないです。今は、あいかわらずのデフレの状況ですからね、ハッキリ申して。御客様は、ごく有名な限られたものにしか、お金を使われない、という状態がスカイツリーが出来ても続いています。本当に心から価値を感じるものにしかお金を使わない、単に美味いだけではダメ、というのが実際の現実であります。
さて、チトぼやきが入ってきてしまったので、話しをブランド・ロイヤリテイーの話しに戻します・・・
<この話しは、長いので8回に分けてUPします。本日は、その第6回でした。>
追伸①
藤井恵子さん著の単行本『浅草 老舗旦那のランチ』に載せていただきました。
不肖・住吉史彦が、「浅草演芸ホール」の席亭さんや、「音のヨーロー堂」の四代目とランチをしながら、浅草について対談する、という趣向です。
他にも20人ほどの、浅草の旦那さんたちがリレー対談で形式で登場します。
是非ご購読を! 平成24年6月3日、小学館発行。
ご購入はこちらです。 (できればレビューも書いて下さいね!)
追伸②
「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。
この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。
その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。
現在の笑顔数は270人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。
参加者の方には、特典も!
皆様も、是非御参加下さい!
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて861日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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