寅さんの口上
テレビ朝日「継ぐ女神」の「お宝鑑定」の場面が、どうも私は嫌いだという件は、旧臘12/6の弊ブログに書きましたが、それは局側の興味本位なノリが嫌いなのであって、登場する老舗さんの考え方は参考になることが多いので、実はよく拝見しています。
あ、念のためおさらいしますと、「継ぐ女神」は朝の番組「モーニングショー」の中の日替わりコーナーで、「伝統を守り、次の世代へ引き継ぐべく奮闘する輝く女性に密着」という企画です。
さて先日登場していたのは、国民的映画「フーテンの寅さん」の実家として有名な、柴又「高木屋老舗」の六代目でした。
このお店の「お宝」は、高額な美術品ではなく、渥美清さんがお店の宣伝の為に吹き込んだというテープ。
さすがにこの品は「鑑定」できなかったようで、この回は嫌いな鑑定場面を視ずに済みましたが、その件はさて置きまして、「高木屋」さんが、この宣伝テープを三日間しか使わなかったという話しに私は、とても感心してしまいました。
映画の「寅さん」はテキ屋稼業ですが、その見事な口上で「高木屋」さんの宣伝をしているのです。渥美さんは映画撮影で世話になった御礼として、このテープを作ったのですが、あまりに見事なテキ屋ぶりなので、店先で放送したところ、人が集まって来て、大変な混雑になってしまったそうです。
放送すること三日間。
「高木屋」さんは、この口上テープを二度と使わないと決めました。
効果があり過ぎ、そして国民的存在である「寅さん」を一店舗のために使うのは、ずるい・良くないと考えて封印したのです。
渥美さんが亡くなって、1998年に『男はつらいよ』シリーズが終わると、柴又の街は一時寂れましたが、その時も使わなかったそうです。
「売れれば良い」「利益極大化」とは対極の姿勢が、この老舗さんにも在りました。多くの方に知って欲しいエピソードだと思いましたので、ここでご紹介しました。
ところで少し話しは逸れますが、渥美さんは「高木屋」さんだけのものでは勿論なく、柴又だけのものでもありません。
渥美さんは、浅草六区で長年活躍して芸を磨き、映画・テレビの世界に移って行った方ですから、渥美さんと言えば=浅草なのです。「寅さん」は戦後浅草に大勢いたテキ屋の再現です。
が、「寅さん」が遺作になったため、渥美さん=柴又と思っている人が多いようです。
この件は、「浅草演芸ホール」を運営する「東洋興業」の松倉久幸会長が書いた本『歌った、踊った、喋った、泣いた、笑われた』に詳しいので、是非お読みいただきたいと思います。
追伸①
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株式会社晶文社 刊行
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.520日連続更新を達成しました。
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