警察手眼

ある日警察の方が店を訪ねて見えて、私に面会したいと言います。

げげげ、テロ事件とか私は関与してませんよ。仏教徒だし。

と思いましたが、尋問に見えたのではなく、なんと、警視庁の創設者・川路利良について書いた、このブログの1/4号をお読みになったとか。在り難いことです。

さらに在り難いことに、これを読んでみて下さい!と取り出されたのが、

『警察手眼』

川路が部下の警察官に与えた訓戒の語録です。現物は初めてみました。

発行元は「警察時報社」。原文は豊後で読みにくい、いや、文語で読みにくいので、解説が付いています。

さてさて通読しまして、国家建設に邁進した明治人の、ストレートな言葉の数々に圧倒されました。

警察官だけでなく、全ての公務員、政治家、それから民間人であっても要職に就く人は、是非これを読んだら良いと思います。警察だけに限定するのはもったいないことです。

川路によれば警察官は徹頭徹尾、365日24時間、国家国民に献身するもので、そして一般人より人格的に高潔でなければなりません。それを説く言葉が実にキビチい表現の連続です。

給料については、このように↓言っています・・・

「おのれ20円の価にして30円の棒を得る時は(中略)官民にその損耗を負はしむ故に必ずや怨望誹読せらるる者と成らん」

要するに、ギャラ20円の価値しかない人間を高い位に就けると必ず朝野から悪評をもらうだろう、逆に20円の価値がある人間なのに10円しか貰わないのであれば、

「必ず人望ありて安宅に住する者」に成れると言います。

キビチいですが、まったく同感です。

私も、安らかに住む者に成りたいものですが、それは私には到底無理なことのようです。ギャラをとらないだけはダメで、

「ひとたび警察官たる以上は、従前の長袖を着し、宴飲快楽をほしいままにするは到底得べからざれば」と日常生活も高潔でなければならないのです。

実際、川路は警察官を官舎に集住させ、酒を禁止し、和服を着ることを禁止し、借金も禁止しました。警官同士で相互に監視させ、不品行があれば連隊責任を負わせたそうな。キビチい。

採用に当たっては、筆記・技能をほとんど不問にして、人柄のみで採用したと言います。ほおお、ですね。

これにより新帝都・東京の治安はだんだんに良くなりました。

維新直後、各藩の藩兵が東京を治めていた時は、その兵隊どもガラが悪く不真面目で、結果治安が悪く市民はおびえて暮らしていましたが、ここまでやってようやく良くなったとか。

それにしても酒を飲めるのは、「朋友、親類の慶賀」の場合のみなんだとか。

キビチい。

と言うか、無理。

追伸

一冊丸ごと「すき焼き大全」とも申すべき本が出ました。

タイトルは『日本のごちそう すき焼き』、平凡社より刊行されました。

この本は、

食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、

全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、

この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。

是非是非お求めください。

弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。

是非。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.785日連続更新を達成しました。

Filed under: 憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 12:00 AM
トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

コメントはまだありません »

No comments yet.

Leave a comment





(一部のHTMLタグを使うことができます。)
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">