スイート・ルーム

 私が絶対に、意地でも休養をとる日があります。

 それは年始の第二火曜日、つまり「成人の日」の翌日です。

 私はおかげ様で健康体ですが、ここで休まないと身がもちません。何故か、と申しますと・・・

 まず12月は忘年会シーズンですので原則無休です。特に12/29-12/31の三日間は、正月用の肉の仕込みが深夜までかかります。

 元日は、店は休みますが、完全休養とはいきません。大晦日の夜、除夜の鐘つきに参加して、浅草寺さんから戴いた蕎麦を食べてから床に就きます。元旦に遅く起き出してからも、翌日からの準備がいろいろあります。

 で、1/2からは正月のバトルです。それが「成人の日」まで続きます。

 それでやっと、小休止できるのが、「成人の日」の翌日の、第二火曜日というわけです。

 さて、その「成人の日」の晩から、我が家には、都内の某ホテルに泊まる習慣があります。結婚した時に披露宴をしたホテルです。

 店を閉めた後、家に帰らずホテルへ直行して、そこでようやく、気分転換をさせていただく段取りです。

 それが毎年の習慣なのですが、それが今年はちょっとしたトラブルがありました。

 部屋に入ってみると、エアコンの振動音がスゴいのです。

 うーん。

 私は、クレームということを、まず言いませんが、この場合は歴然と誰が見ても、イヤ誰が聞いても大きく振動しているので、そのことをフロントに伝えました。

 すると、すぐに係りの人がやって来て、音を確認し、

 へ、部屋をお取替えします!

⇒待つこと、しばし。

 替わりの部屋へ案内されますと、

 ひ、広いですね。

 野球ができそう・・・は流石に言い過ぎですが、卓球は楽にできます。

 そういう積りはなかったんですけど・・・

 いいんです、いいんです!こちらのお部屋をお使い下さい!

と言って、係の人は去って行きました。

 でもねえ、外タレじゃあないんだから、こんな広い部屋使い切らないよなあ。

 クロゼットが二つもあるけど、スーツは1着しか持ってきてないから、無意味だよなあ。

 おお、棚が6段もあるな。タレントさんなら、帽子とかアクセサリーとか入れるのでしょうねえ。

 おっと、スリッパも微妙に大きいぞ。細かく差をつけるんだねえ。

 そういう積りはなかったんですけどねえ。

 でも、良く考えてみると、この日はホテル業界では、超に超が付く閑散日です。

 だって、正月の後の、成人式の3連休の最後の日は、家に帰って、明日からの仕事に備える日です。ホテルでゆっくりする人は、ほとんどいないと思います。祝日ですからビジネスマンもいません。

 宿泊料金も格安設定です。だから、そもそも泊まっているんですけどね。

 そういう状況だから、こういう広い部屋も空いているのでしょう。

 有難く使わせていただくことにしました。

 今年は、このまま最後までツイていると良いのですけど・・・

 無理かなあ。

追伸

  毎日新聞社発行の毎日ムック『100年の味 店100選』に載せていただきました。有難いですね。2012年1月12日発行。是非お求め下さい。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて685日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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交付を受けられる事業者

 東日本大震災の被災地で再建を目指す中小企業に、公的な支援が届かない。

 そういう事例が少なくないと、報道で知りました。

「福島県浪江町の請戸(うけど)漁港近くの「鈴木酒造店」は11月下旬、山形県長井市に移って酒造りを再開した。」

「酒蔵も商品も津波で流され、経営者の鈴木大介さん(38)の自宅は全壊。福島県内では一時的な再建場所を見つけられず、「いつかは浪江で」との決意を胸に、長井市の酒蔵を買い取ることにした。」

 おお、偉いです。

 ところが・・・

「酒蔵の改修や貯蔵用タンクの購入も含めて1億円強かかる。しかし(中略)補助金を受けられるのは、県内で再建する事業者だけ。福島県が設けた上限3000万円の補助制度も対象外で、結局、銀行から融資を受けるしかなかった。鈴木さんは「誰のための公的支援なのか」と、ため息をつく。」

「交付を受けられる事業者は6割程度。公的支援を受けられる条件が実情に合っていないため、申請さえできない事業者もいる。」

 なんということでしょう!

 馬鹿げています、実に。

 この規定を作った人間の、発想方法を疑います。

 思い出しますのは、福島県酒造組合が昨年秋に「セルリアンタワー東急ホテル」で開催した、試飲会のことです。

 「鈴木酒造店」の御主人は、酒瓶を手に独り舞台に登り、復興への決意を語っておられました。津波と原発事故で二重に被災しながら、また立ち上がらんとする、人間の精神力というものを、目の前に目撃して、心の奥底から感動しました。

 それなのに、そういう方に、この国が救いの手を差しのべないとは!

 最近、日本人であることが、ときおりイヤになります。

 いえ、正確には、日本国政府の下に居ることがイヤになります。 

 大政奉還した方が良いかもしれませんね。天皇家に。

追伸

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国分町

 今、仙台が復興景気に沸いている、と大晦日の読売新聞が報じていました。

 東北随一のネオン街・国分町の飲食店は、連日大賑わいで、売上げが前年の2割増し、という状況が続く店も多いそうです。

「震災前より景気がいいのよ。復旧作業で全国から、建設や土木関係や不動産関係、保険関係者とかが来ていて、お金はかなり落としてくれているかな。それもキャッシュで。震災直後は、“これからどうなるんだろう”って途方に暮れたけど、今はちょっとしたバブルね」(飲食店経営者)(=平たく言うとママさん)なんだそうな。

 店内では作業服のままで繰り出して来た客が目立つとか。

 笑えたのは、そうした客を接客するコツが、やはり読売新聞に報じられていたことです。「震災の時に、どうなさっていましたか?と切り出すようにしています」(飲食店関係者)(=平たく言うと、お姐さん)

 客の中には、単にお姐さん達と仲良くするだけでなく、東北の日本酒を飲んで支援しよう、という奇特な方もいるらしく、それは大変結構な話しです。

 ただ、そこに書いてある「飲食店」というのは、全ての飲食店ではないと思います。新聞は風俗店も「飲食店」と表現しますが、立派な御料理を出す御店の方は、ここに書いてあるような景気とは聞いておりません。少なくとも、私は。

 復旧関係者は、仙台へ遊びに行っているわけではなく、昼間は仕事です。ハードな仕事で、夜遅くまでかかるのでしょう。そのハードな仕事が終わって、寝る前にクールダウンしたいから、夜更けて繁華街に行くのだと思います。嫁さん・子供は東京ですしね。

 そういう状況ですので、彼らが向かう「飲食店」とは、立派な御料理を出すお店のことではないと思っています。

 潰れてしまった店もあります。

 帝国データバンク仙台支店の発表によると・・・

やはり「国分町で高級料亭などを経営する「銀たなべ」が事業を停止し、自己破産申請の準備に入った。」

「東日本大震災の影響で一時、全店営業停止を強いられ、売り上げが急減したことが響いた。負債総額は約5億円。同社は1949年に創業。国分町や周辺で日本料理店などを展開し、地元では高級料亭として知られた。」

とのことでした。お気の毒なことです。

 今の復興景気で儲かった人が、本格的日本料理を食べて下さると良いのですけどね。

 「ちょっとしたバブル」をバブルに終わらせないよう、消費する側もそれを受け取る側も、お金の使い道を、よくよくお考えいただきたいものです。

 しっかり考えて消費してね、お姐さん達。

追伸

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ランキング操作

 1/5の新聞・テレビが「食べログやらせ業者」について報じました。

「飲食店のランキングサイト「食べログ」が、好意的な口コミ投稿の掲載や順位の上昇を請け負う見返りに飲食店から金を受け取る「やらせ業者」に、ランキングを操作されている事例があることが4日、運営会社のカカクコム(東京)や飲食店関係者への取材で分かった。」

「東京都内の飲食店関係者によると、やらせ業者はIT関連会社や投資顧問会社を名乗り、店舗を個別に訪問。「食べログの点数を上げる裏技のご提案です。食べログからは非公認のサービスとなります」などと言葉巧みに勧誘し、店舗側の意向を反映した好意的なやらせ「口コミ」を毎月5件ずつ投稿するという。」

「報酬は月間約10万円。男性は「依頼を受けた店舗の点数を確実に上げる」などと強調したという。」

 まあ、私たちにとって、この話しは旧知の話しで「何を今皿イヤ今更」という感じですね。私が聞いたところでは、ライバル店を貶す書き込みもしていたはずです。

「食べログは昨年11月の月間利用者数が3200万人以上に達し、影響力が大きく、やらせによって客入りの悪い店が“繁盛店”に変身する場合もある。」

「カカクコムは、サイト内の監視を強めるなど対策強化に乗り出した。カカクコムは現時点でやらせ業者、39社を特定しており、田中実社長(49)は「今後は不正業者の業務停止を求めて提訴するなど断固とした措置をとりたい」としている。」

 ほお、「断固たる措置」ですか。

 どういう措置ができるんでしょう。「観もの」とはこのことですね。

 だって、「食べログ」は、登録さえすれば誰でも投稿できますね。本名かどうかわかりません。

 やらせ業者は悪用し放題でしょう。匿名性のネット社会で純然たる公正な「口コミ」なんて、在り得るんでしょうかね。

 だいたい料理屋なんて自分の舌で選べば良いんです。

 それが出来ない時は、しっかりした見識をお持ちの方に教えてもらえば良いんです。じゃあ「食べログ」は誰が使うのかって?友達のいないヤツが使えば良いんじゃあないですかね。

 私だって私の友達には、お教えしますよ。勿論、同業者のことですから、ネットには書けませんけどね。それこそが口コミというものです。

 ネット上の「口コミ」なんてものは、公正なものでは断じてなくて、ホンモノの口コミの中にだけ、真実が在るんです。

 ネットの普及以来、私達は公正であることに鈍感になり過ぎていませんでしょうか。

 こうしたランキング操作のことを、ネット業界では「ステルス・マーケテイング」とか言っちゃうそうですが、カタカナにすることで、不公正な感じを消そうとしているだけです。

 一般人や芸能人のブロガーが、企業から依頼を受けて、その商品を褒めるのも同類です。

 以前、このブログに結構な数の読者がいることを知った、ある人が言いました・・・

 へええ、じゃあ、住吉さん、儲かっちゃうんでしょうねえ!

 念のため、この「じゃあ」について解説しますが、「じゃあ」とは「住吉さんは老舗料理屋の主人だし、書いてるブログに読者が大勢いるなら、その立場を悪用できますね。旨くもないものを旨いと書いて、その旨くもないものを作っている業者から、お金をもらっているんでしょうね。儲かっちゃうんでしょうねえ!」

という意味です。

 私が、昔の、名誉を重んじる侍なら、

 ぶ、無礼者!

と叫んで、刀を抜き、その女(⇒女だったのです!)を切り捨て御免にしたことでしょう。

 ところが、彼女はニコニコと楽しそうに、この話しをしていて、悪気はカケラもなさそうでした。ブログとは、そのように使うものだと、最初から考えているようでした。

 まさに、末法の世ですな。

 南無観世音菩薩。

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酒の四季

 肉には目立った四季がありません。ですので、すき焼き屋は四季を感じにくいですね、他の料理屋に比べて。

 それでは寂しいので、ザクの野菜に変化を付けて「変わりザク」ということでオプション販売しています。

 そんな折、日本酒業界の方と話していたら、

 酒にも四季がありますよ!

ということでした。

 春の「原酒ロック」

 夏の「生貯蔵」

 秋の「ひやおろし」

 冬の「しぼりたて」

というのが、その御提案です。

 そこで季節の御酒と「変わりザク」をセットにしたメニューを作ろうかと思い、思案中です。

 で、その御提案について、です。この御提案は大変結構ではあるのですが、造り手さんが考えたので、飲み手の季節感とは、微妙にズレる部分があると思います。

 そもそも日本酒は、いつ頃醸造しているか、ですが、現代化していない伝統的な造り方をする蔵の場合、だいたい11月〜翌2月です。「寒づくり」と言いますね。だから毎年暮れには、最初の「しぼりたて」が出てくるわけです。

 まず、ここが飲み手の季節感とズレるところです。

 造り手さんは、ここでフレッシュな酒を飲ませたい所でしょうが、世間は真冬ですので、むしろ燗酒を飲みたいですね。燗酒には、フレッシュな酒でなくて落ち着いた酒の方が良いですので、すれ違いが起きてしまいますね。

 「寒づくり」は2月まで、蔵によっては3月まで続きます。年内より年明けの方が寒いので、吟醸酒とか、よりお値段の高い酒を、年明けに造る傾向があるようです。

 ここで出来た、吟醸酒の「しぼりたて」を春先に飲むのは良いと思います。芽吹きの季節に合います、フレッシュですので。

 だから御提案の、春の「原酒ロック」は悪くはないのですが、ロックにするかどうかは、意見が分かれるでしょうね。

 「しぼりたて」は加水せず、つまり原酒の状態で飲むと最高に美味いですが、度数は18〜19度と高いです。だから酒に弱い方には辛い度数です。

 それでロックにしようと提案なさっているわけですが、呑み助はこれを認めないでしょうね。悪酔いを心配するのなら、チェイサーをつけておき、酒は酒のままで行きたい、という人が多いかもしれません。

 夏場は日本酒党受難の季節です。

 この時期は、どうしても人間の体は水分を欲しますので、サラサラと飲める、ビールのように度数が低くで、発泡性の酒が好まれます。「生貯蔵」は、日本酒の中では清涼感がありますが、ビールにかなうわけもなく難しい所でしょう。

 秋の「ひやおろし」、は良いと思います。

 「ひやおろし」とは、寒づくりした酒を、夏の間寝かせておいて落ち着かせたものです。これを涼しい季節になってきたら卸す、ということですね。

 秋にそういう酒質のものを飲むのは良いことで、「ひや」という名前ですが燗をつけても旨いです。そうすれば秋の気分を満喫できると思います。

 ただ、ここで問題なのは気候の温暖化です。

 9月に入ったら、すぐ「ひやおろし」を解禁する蔵元さんが多いですが、今の東京の9月1日は、まったく夏です。お彼岸中でもまだポカポカしていて、10月に入って、ようやく秋らしくなりますね。ここがズレるところです。

 9月1日では、まだ気温が30℃なので、酒を近々いやキンキンに冷やしたくなりますが、そういう飲み方は、せっかく落ち着かせた「ひやおろし」の酒質に適している、とは言い難いのです。

 せっかく「ひやおろし」という過程を加えるわけですので、その御酒の魅力を最大限に引き出すような、御提案にした方が良いと思います。

 できれば10月、早くてもお彼岸まで待って解禁するのが良いと思っています。

と、いうわけで、季節の御酒と「変わりザク」をセットにしたメニューを作ろうかと思い、思案中しています。

追伸

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山ふぐ

 11月に前橋市で開催した「すきや連」でお世話になった「群馬やまふぐ本舗」さんから、蒟蒻とシラタキが届きました。

 「やまふぐ」の御主人の御自慢は、その蒟蒻・シラタキが刺身として食べられることです。下茹でしなくてOKで、そのまま食べられるのです。

 それどころか「下茹で厳禁」(!)と書いてあります。茹でて固くしてもらったら迷惑!ということです。へえーですよね。

 そういうことが出来るのは、石灰が少ないからです。

 そもそも石灰は、アルカリ反応を起こしてコンニャク粉を凝固させるのに使います。作るコンニャクに対し、必要量を完全に反応させれば、最小限で済むわけですが、その加減は、御主人曰く・・

「その辺りの添加基準は、データと数値で表すより、今までの経験と感覚でその都度加減しないと、四季折々の製造環境の違いにより、均一に作る事は難しいんです。」

 ところが、一般的な製造者さんは・・・

「食品に一番あってはならない「腐敗の原因」を取り除く事が第一と考え、必要以上のアルカリ分を加え作るんですが、その加減の限度を知らず、数値ばかりを見てしまうのだと思います。」

「しかし!最低限必要とされる凝固剤を完璧に混ぜ合わせれば、意外と日持ちするんですよ!パックしてボイルすればなおさら。」

ということで、「やまふぐ」さんの蒟蒻は、意外なことに消費期限が長いのです。

「みんな「製品が傷むのを避けるため!」って云うか、加減の限界を知らないし、また挑戦してないため、無駄な石灰添加の悪循環に陥ってるのかも知れませんね!」

「要は、一般的な製品はいろんな部分で無駄が多いんです。物事には「適量」て云うのがあり、コンニャクもそうなんですよ。」

 この話しには、なるほどと思いました。

 今時はどうしても過剰に「安全」に、食品を作ろうとする傾向があるように思います。結果、「安全」でも「加減」が悪くて⇒不味い場合が多いような気がします。

 実は私はワインを大量に飲むことをしませんが、それはワインの参加防止剤(=亜硫酸塩)が好きでないからです。日本酒のように火入れをしないワインは、これを入れないともたないのですが、その量が多いものが結構あるようです。

 それが苦手なのです。

 このクスリの量が多すぎないか、厚生省も通関の段階で、規制しているそうでが、その基準は結構緩く、皆パスしてしまうそうです。

 私がワインを好きになれないのは、この人達のせいです。

 「安全」が大事でないと言うつもりはありませんが、過剰な安全は考え物ですね。その証拠に、蒟蒻に石灰を多く含ませたからといって、消費期限がそれだけ伸びるわけでもありません。

 で、結局「やまふぐ」さんのシラタキの御味はどうだったのかっていうことですが、

 フレッシュ感が素晴らしかったです。御高説の通り、臭みは完全に無しです。夏場に酸味を効かせて食べたら爽快でしょう。

 こういう食べ方をして初めて、「山ふぐ」と言われる理由が分かります。

 すき焼きに入れてしまうと、どうしても少し固くはなりますので、「山ふぐ」感はかなり薄まります。でも弾力はしっかり残っていて、食感が楽しいです。七味とか辛みを加えるとさらに良いかもしれません。

 同じシラタキでも、いろいろな食べ方ができるのだなあ、と感心しました。

  追伸

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とりあえずビール

 新年会シーズンですね。

 とりあえずビールで乾杯!

という場合が多いと思います。

 その「とりあえずビール」が廃れつつある、という話しを耳にします。

 「とりあえず」では、ビール関係者の皆様やビールさん御本人に失礼ではないか!態度を改めるべきだ!という理由で廃れつつある、わけでは勿論ありません。

 もっと違うものを最初から飲みたい、という方―特にそういう若い方が増えているそうなのです。

 その気持ちは分かるけど、最初の一杯位は、皆と同じにしたら良いのに!と私などは思いますが、了見が狭いでしょうか。

 先日、ある「打ち上げ会」をすることになり、15人ほどで飲みに行った時に、こんなことがありました・・・

 仕切り役の幹事さんは、もう夜も遅いし、とにかく早く乾杯して盛り上げたいので、

 ビール以外の方はいますか〜?!

という注文の採り方をしました。いちいち個別に注文を採ったら時間がかかって盛り下がりますからね。そうしましたら御一人だけが、店員さんにビールの銘柄を聞いて、別の銘柄を注文しました。

 私は、その方はひょっとしたら、そっちのビールメーカーさんと御取引きがあるのかと思い尋ねてみましたが、そういうことではなく単に「お好み」のようでした。

 うざっ!

と口には出しませんが、内心私がそう思ったことを、ここに言明いたします。

 最初の一杯位は、皆と同じにしたら良いのに!と思いました。心が狭いもんですから。

 ところが、です。最近の状況=「とりあえずビール」が廃れつつある状況は、そういうことでもないのだそうです。単に「お好み」の話しではなく、アルコールに弱い方が増えているようなのです。

 ビールのアルコール度数は、たかだか5%であって、12%のワインや15%の日本酒より、かなり低いです。だから、酒に弱い方でも、とりあえず乾杯だけは参加できるはずです。

 ビールはこれだけ度数が低いのだから、誰でも少しは飲めるよね。だから乾杯位は全員が同じ物を飲んで、グループの一体感を深めようね。というのが「とりあえず」の真意だと私は思っています。

 勿論、一体感という意味では「とりあえず御酒」の方が、さらに望ましいです。日本酒業界の方は口を揃えて、そうおっしゃいます。

 フクシマ第一原発が出来て、運転を開始した時の祝いの乾杯は日本酒で行ったようですね。テレビで見ました。GE社から派遣されて来たらしき、アメリカ人技術者も、酒の試飲会で見かけるような、大振りの猪口を手にして乾杯に参加していました。

 同じ日本酒で乾杯することが、日米関係技術者の一体感を深めたと想像できます。その後の事態はさて置きますが。

 しかし、ここでネックになるのは、やはり度数です。5%のビールでも「・・・」という方が増えている状況では、15%の日本酒はキツいですね、ゼンゼン。

 そう言えば去年「大震災6カ月―全ての食材を東北から集めた、住吉史彦の会!」を開催した時は「とりあえず御酒」で乾杯しました。東北の蔵元さんが3社参加してくれたからです。

 そうしましたら、会が終わった後、いつもなら二次会に行くような面々が「帰る・・・」とおっしゃいます。

 どうかしました?と尋ねますと、

 いやあ、酔っ払っちゃってねえ、えらく・・・

ということでした。

 翌日のフェイスブックでも、

 住吉さんの会は最高だったけど、酔っ払ったなあ、最初から日本酒はキツかったなあ。

というコメントが書いてありました。

 なるほど、そうでしたか・・・

 要するに「とりあえず御酒」はもちろん「とりあえずビール」すら危ういので、日本酒業界の方は、低アルコールのものを開発するよりないかもしれません。

 でも、そういうのはおいしくないんですよね。「低アル」飲料は、そもそも飲めない人に飲ませる飲料なので、甘くしてあったり、酸っぱくしてあったりします。

 嫌いなんですよね、個人的に、そういう「御子様テイスト」の酒が。これまで「いいね!」というのにお目にかかったことがありません。

 だから、私個人の会は、今後も「とりあえず御酒で乾杯!」しますね。

 最近は、加水してしない「原酒」が出回っていて、あれは美味しいですよね。

 度数は18%とかですけど、あれは美味いですから、ああいう御酒で乾杯しましょう。 

 うーい、ひっく。 

追伸

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またまたまたクリスマスの話しです。

  年始なのに、またまたまたクリスマスの話しです。

 日本養殖新聞の、「うなっくす」さんことTさんが、

 「クリスマスにうなぎを食べるワケ」プロジェクトを提唱なさっています。

 そのブログが面白かったので、御本人に無断で転載しますと・・・

 「クリスマスに何でうなぎ?」ってことで、その理由を以下、並べてみました。

▼”クリスマスにチキン”って定着しすぎて、もう飽き飽きだから。

▼他の人はチキンばかり。自分だけ、うなぎを食べる事で優越感に浸れるから。

▼鰻重を食べる事で、ありきたりではない、思い出に残るクリスマスを過ごす事が出来るから

▼体調崩しやすいクリスマスの時期はビタミンC以外、豊富な栄養を含むうなぎが最適だから(注:デザートにはビタミンCをたっぷり含んだデザートを)

▼川魚の中で、肌に良いコラーゲンを多く含むウナギは、肌荒れを気にするこの時期に打ってつけだから(※コラーゲンは、ビタミンCを一緒に摂る事で吸収を良くする)

▼クリスマスは”聖なる夜”であると共に”精なる夜”、それだけにうなぎは欠かせないから。

▼愛し合うカップルは、チキンより精のつくうなぎが最適だから。

▼慌ただしい師走に、比較的空いたウナギ屋さんで美味しい鰻重を食べると心がほっとし、落ち着けるから。

▼”ごちそうだぞ!”と強調、クリスマスプレゼントに次いで、うなぎを大切な方におごると喜ばれる(?)から。

▼うなぎとは世界に誇る日本を代表する伝統食文化、チキンを食べている場合ではないから。

▼ ウナギイヌがサンタの格好をするとたぶん、かわいいから。

追加:男子がお店で女の子に鰻重の『特上』を頼んでも、フレンチ最上級コースの1/3以下だし、オトコのメンツの割に実はコストパフォーマンスに優れてるから。

 ははは。よくも、これだけ理由をお考えになったものです。スゴいです。

 しかし、です。鰻がこう来るなら、すき焼きも黙ってはおれません。

 で、考えつきました。

 「バレンタインに、すき焼きを!」

 早速、鰻がバレンタインも占領しないよう、Tさんに申し入れて?おきました。

 り、理由ですか?

 うーん、

▼ 住吉さんがサンタの格好をするとたぶん、かわいいから。

 え? それじゃあ、クリスマスの理由だろう、って?

 ス、スミマセン!

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クリスマスケーキ

 年始なのに、またまたクリスマスの話しです。

 この日「人形町今半」のT社長の御自宅に、滅茶滅茶に破壊されたケーキが届いたそうです。宅配便の業者が乱暴で、「配達中に三回はぶつけたな」と言う状況だったそうな。

 この件について、Tさんは「夕方取り替​えに来たけど、宅急便でケーキを送るのは大変ですね。宅急便業者​も大変です。」とコメントし、それで皆から称賛されました。

 「尊敬しました!!普通だったら、こ​んな状態でこのやろうとか、どうなってるの?とか、ネガ​ティブなこと書いちゃいそうですけど、業者さんも大変なのは確かですし、怒っても、もうそれは​、なおりませんしね! 物事の捉え方について勉強させてもらいました(^^)」

「やはり飲食業としての学びですね」

という具合でした。

 Tさんは自分が荷主で、しかも、おせち弁当という壊れやすいものを、ごく短期間に集中して出荷する立場なので、ケーキ配達業者の立場が容易に想像でき、それで自然に「大変ですね」というコメントが出来たのだと思います。

 でも、そういう発想の無い方の場合、自然な反応は「馬鹿野郎」「ふざけんな」でしょう。

 お子さんがケーキをとても楽しみにしていた場合、親としてカーっと来る可能性はありますね。「どうしてくれるんだ」と言いたくもなります。

 「どうして」と騒いだって取り替えるしかないですけどね。

 私はケーキとか、おせちとか、そういうヤヤコシい物は出荷しませんから、Tさんほど業者に同情的ではありませんが、それでも極端な繁忙期がある人の大変さは、分かるつもりです。

 なにしろ、浅草で商売していますのでね。

 ケーキ業界のクリスマスに匹敵し、チョコ業界のバレンタインに匹敵する、「浅草の正月」を毎年経験させていただいています。

 今年は、大震災を受けてスタッフ数を最小限にしていましたので、本当に心配でした。

 なんとか六日まで凌ぎ、今日で七日です。

 ここまで観音様の御加護があったことに、心から感謝したいと思います。

 メリー・クリスマス! いや、間違えた、

 南無観世音菩薩。

追伸①

 本日は大相撲東京場所の、初日の前日ですので、「呼び出し衆」の皆さんが、興業の宣伝のため「ちんや」を訪問されます。通称「触れ太鼓」です。大広間へお通しして、食事中のお客様にも見ていただきます。

追伸②

 本日1/7に浅草7丁目の「待乳山聖天」で「大根祭​り」が開催されます。

 御本尊の聖天様にお供えされた大根が、フロふき大根に調理されて、御神酒と共に参詣客に振るまわれます。毎年1/7の恒例行事です。

 また今回は、近くの​聖天公園でフリーマーケットもあります。福​島県や宮城県の被災地物産展が開催されますので、是非皆さ​ん、お出かけ下さい。

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奏楽堂②

 この話しは、昨日から続いています。

 昭和の終わり頃のことです。

 「旧東京音楽学校奏楽堂」を移築しようとする芸大執行部に異を唱えて対立し、しかし芸大側の強硬姿勢を前に困った故・芥川也寸志先生、故・黛敏郎先生が、内山栄一・台東区長に相談を持ちかけましたが、その場所が弊店「ちんや」でした。

 実は、これは自然の成り行きで、内山先生は元々、株式会社ちんやの顧問税理士さんなのです。今でもお元気で、弊社の税務をお願いしていますが、その税理士さんが区議に出て⇒都議を経て⇒区長になられたわけです。

 その内山先生に、芥川先生・黛先生が、「奏楽堂」の移築をなんとか阻止できないものか、と相談をもちかけたわけです。問題なのは当然、費用と代替地です。

 内山区長の英断で費用は支出され、また土地も現在地が使用できることになって、「奏楽堂」は上野公園の中に残りました。この問題は紆余曲折もあって簡単ではなく、あやうく(?)「奏楽堂」が隅田公園に来る話しなりかけたそうなのですが、最終的には上野公園に残りました。

 そうした緊迫した相談がなされたのが「ちんや」の部屋でした。

 当時中学生だった私に、その話しの趣旨が分かるわけもありませんが、芥川先生・黛先生にサインをいただきに行った記憶があります。

 これでようやく、「奏楽堂」と「ちんや」の関係が見えて来たかと思います。

 こうした経緯がありますので、その後、弊社は「奏楽堂」で台東区が演奏会を主催する時には、協賛をするようにしています。

 協賛を続けて来た期間には、リーマン・ショックやら今回の大震災やら「経費を削りたいなあ」と深刻に思うこともしばしばありましたが、続けてきました。

 この協賛を続けて来たことで、後に私は「台東区アート・アドバイザー」に起用されるのですが、そうした一個人のことよりもっと嬉しいのは、弊店のお客様が「奏楽堂」のお客様になり、「奏楽堂」のお客様が弊店のお客様になったことです。

 昨日のブログに書きました、クリスマスイブの日のことが、とても嬉しかった理由は、そこです。

 「これから奏楽堂の、クリスマス・コンサートに行きます」というお客様が2組、同時に弊店で食事をされたことも奇遇ですが、さらに同時に「ちんやメンバーズ・カード」に入会されたのも奇遇で、驚きました。

 驚き、そしてまた協賛を続けて来たことが報われたような気がしました。

 御縁を大切にすること、それを継続すること。

 それが大事と思います。

 報われる日が来ました。メリー・クリスマス!

追伸

 1/7に浅草7丁目の「待乳山聖天」で「大根祭​り」が開催されます。

 御本尊の聖天様にお供えされた大根が、フロふき大根に調理されて、御神酒と共に参詣客に振るまわれます。毎年1/7の恒例行事です。

 また今回は、近くの​聖天公園でフリーマーケットもあります。福​島県や宮城県の被災地物産展が開催されますので、是非皆さ​ん、お出かけ下さい。

  本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて676日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

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Filed under: 今日のお客様,憧れの明治時代 — F.Sumiyoshi 12:01 AM  Comments (0)