友三角、上三筋

 私が日頃お世話になっている、「浅草うまいもの会」のK子会長(=鰻「川松」社長)から、質問メールが来ました。

 「ある焼肉店に行ったら、「座布団」とか「友三角」「上三筋」など部位がメニューに書いてあるんです。店の人から、モノ凄く貴重な部位と聞かされたんですが、どういう部位なんですか?」という御質問でした。

  「友三角(トモサンカク)」「上三筋(ウワミスジ)」・・・ですか。

  肉の業界で、一般に表示することを求められているのは、「もも」とか「かた」とか「リブロース」とか、そういう大分類でして、表示方法が決まっています。しかし、最近、さらに細かい、小分類の部位名を消費者に表示することによって、それがとても旨い部位であるかのように思わせる手法が、一部で流行っているようです。小分類の部位名が消費者になじみがないのを利用しているわけです。

  もちろん、細かく表示して悪いわけではありませんし、「友三角」「上三筋」というのは、マズい部位ではありませんが、「友三角」は「もも」の一部、「上三筋」は「かた」の一部でして、たしかに焼肉向きの部位ではあるものの、「格別上等」の部位というわけではありません。

 モノ凄く貴重な部位、というのは、チョッと言い過ぎでしょう。言葉のパフォーマンスのような気がします。

 「座布団」「徳利」なども、やはり部位やパーツを示す隠語ですね。これも「格別上等」と言うのは、少し大げさと思います。

 「友三角」(「もも」の一部)

 「上三筋」(「かた」の一部)

と表示するのが、最も正確かつ正直と思いますが、そうはやらなそうですよね。

  一般の方が、肉のことを体系的に学習する機会などはほとんどありませんから、こういう手法を考えつく業者がいるのだと思います。

  「大人の食育」もしないとなあ、と思う今日この頃です。

 特に、焼肉店などに行く機会の多いのは、男性ですから、「男が肉を学ぶ会」なんていうのを、やらないといかんのかなあ、と思ったりしています。

 あ、しまった、K子大明神は女神様だったか!

 「肉を学ぶ会」には、もちろん、御参加いただけるようにいたしますので、御許しを!

 御気の短いのはいけませんよ。 乱暴なことは御考え直しを! ぎゃあああ。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

*「浅草うまいもの会」については、こちらです。

ブロガー?の喜び

 私がこのブログを始めてから、もうすぐ3ヶ月になりますが、嬉しかったことは、しばらくの間ご無沙汰していた知人・友人から、連絡や書き込みをもらったことです。

 私の学生時代の友人にはサラリーマンも多く、転勤を繰り返す内、疎遠になってしまいがちですが、こちらは全く異動することなく、同じ土地に居続けています。だから「浅草+ちんや+住吉」と入れて、ネットで検索してくれれば、簡単に、こちらが何をしているか、わかってもらえます。

 毎日が年賀状みたい、と言えなくもありません。便利ですね。

 ネット上に、完全に個人名を出すことには、実はかなり抵抗感がありました。でも、既にマスコミ取材等で、しばらく前から自分の名前や肖像が掲載されていましたので、どうせなら、どーん、と公開して、書きたいことを書いてやれ! そう思って、このブログを始めた次第です。

 今のところ、デメリットよりメリットの方が大きいようです。

 それから、このブログを始めてから、気のせいかネオン街での、私のモテ具合がUPしたように感じます。

 「あらあ、住吉さんじゃないの、ご無沙汰だわねえ! アタシ読んでるのよ、住吉さんのブログを、ま・い・に・ち!」

 「ま・い・に・ち!」は、もちろん営業的なデフォルメでしょうが、まあ、そう言われて悪い気はしません。

  それに飲んでいる間、会話のネタを、こっちが一生懸命考えなくて済むので、気が楽です。「先週のブログに書いてあった、○○のことを、もうチョッと教えてほしいわ」と言われたら、それに答えていれば座持ちがします。

 座持ちしないことを心配するより、むしろ、私が話題を独占してしまい、同席している男前諸侯のご機嫌を損ねないよう、心配する必要があるくらいです。

 いやあ、人気ブロガーは、辛いなあ。ひひひひ。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

Filed under: ぼやき部屋,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 6:30 AM  Comments (2)

人出と人手②=ニッポン5分割計画

   日本の祝日を、地域によってズラす、ということが真剣に議論されているのをご存じでしたか? 日本を5分割して、ある地方=5月第1週がGW連休、その南の地方=5月第2週がGW連休・・・という具合に順番にズラしていくのだそうです。

  5/19の国際観光日本レストラン協会の理事会に、私も理事ですので出席したのですが、そこへ政府観光庁・観光産業課長のS氏が来場されて、このプランを説明されました。はやければ、今年秋の国会に法案を出す、というスピードなのだそうです。

  そのご説明の中で、うーん、とうなってしまったのは、日本人の休日が集中しているせいで、観光関連産業の接遇レベルが上がらない、というご指摘でした。

 日本人の有給休暇取得率は、もともと低いのに、またそこから下がり続けているそうで、正月・GW連休・お盆くらいしか休みを取らない人が多いようです。この短期間に、多数の観光客が観光地へ殺到するのですから、現場はたまりません。人手が足りませんから、レベルの低い接遇になってしまいがちです。このブログの、4/6号に書いたことを、そのまま政府観光庁のお役人様に指摘されてしまった次第です。

  さらに悪いことに、正月・GW連休・お盆はホテル代がピーク料金ですから、日本人は、高い値段で、レベルの低い接遇を受け、観光というもの自体に嫌気がさしてしまっているらしいのです。完全な悪循環で、たしかにマズいですね。

  本来なら、有休取得率を上げれば良いわけですが、政府内では、それについては半ば諦めムードのようです。そこで代わって登場するのが、祝日ズラし作戦です。フランスなどでは、既に実行されているそうで、観光産業課長氏は真剣です。熱弁を振るって、「是非、レストラン協会さんの御協力を!」とよびかけて帰られました。

 この件、基本的に、私は賛成です。

  たしかに、祝日がズレたら、全国展開している大企業は大変でしょう。でも、既に海外と取引きしているのであれば、先方の国の祝日にあわせて仕事をするわけで、似たような話しです。

  それより、日本人が観光を、今より安い価格で、ゆったりと楽しめるようにすることを重視していただけると有り難いです。経済成長にもゼッタイ寄与します。それに観光の現場が、モーレツに忙しい日に、辛い思いをしなくて済みます。是非進めていただきたいと思います。

  ただですねえ、5分割っていうのは、どうにも細か過ぎやしませんでしょうか。たとえば、山梨県が「南関東」か「中部」か、即答できますか? わかりませんよねえ。

 3分割くらいが、いいところのような気がします。あるいは、東の都市圏とそれ以外+西の都市圏とそれ以外、で4分割とか。

 え、4はマズいだろう? やっぱり、そういうこと気にするんですかねえ?

 こちとら、ス・ミ・ヨ・シ+フ・ミ・ヒ・コ、で4+4ですけどね、普通に生きてますよ。 

 ふん!

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

このブログの4/6号も、是非お読み下さい。

Filed under: ぼやき部屋,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 7:09 AM  Comments (0)

修学旅行

 5/21は、月に1回の「雷門横丁一斉清掃」の日でしたので、朝から出動しました。先月とは違って、暑くも寒くもない陽気で、気分良く運動不足解消させてもらいました。

 ところで、5月の浅草は、修学旅行シーズンです。私たちが中高生の頃は、修学旅行と言えば、夏場の7月がお約束でしたが、昨今は5月です。教員をしている友人に聞いたところでは、4月にクラス変えをして、そのクラスの中に派閥ができない内に、つまり5月中には、修学旅行に連れていく必要があるんだとか。中高生も厄介になったものです。

  それと、もう一つの変化は、生徒全員が一箇所で食事するわけではないことです。生徒がグループにわかれて食事するようです。だから、食べる店は、大きな店でなくても良いわけで、雷門横丁(「ちんや」のすぐ北側)の、もんじゃ焼き「おすぎ」さんなどは、この時期大繁盛です。

  「おすぎ」さんと言えば、そうです、このブログの4/17号に書いた、浅草雷門横丁振興会会長の、U子ちゃんの御店です。修学旅行生の間では、なぜだか、もんじゃ焼きが大人気だそうで、出勤途中にチョイト覗くと、朝から大忙しの様子です。

  「食育」という意味でも、中高生は大事ですから、もんじゃ焼きに対抗して、すき焼きも頑張らねば、と思い、「ちんや」も「手作り工房マップ」に登録しました。「手作り工房マップ」のことは、3/13号にも書きましたが、台東区役所が作っている、見学・体験をできる区内の工房のリストのことです。

 見学は大人数で一度にはできないのですが、このマップで「ちんや」を見つけて来た人は、修学旅行生はもちろん、歓迎したいと思っています。

  小さいうちから、すき焼きなんて贅沢は教えられない、という親御さんもおいでのようですが、お子さんが、変な味覚を身につけてしまってからでは遅いと思います。昨今では、いくらでもバケ学的に味を作り出せますから、そういう味を覚えていただいては困ります。

 是非、伝統的な調理方法の現場を、一度は見学していただきたいと思っています。

  先生が、キレイな女の先生なら、さらに大歓迎なんだけどなあ。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 *「手作り工房」マップについては、こちらです。 

*浅草雷門横丁振興会については、このブログの4/17号をご覧下さい。

ジョークの効用―国際観光日本レストラン協会・関東支部会総会

 5/19に、国際観光日本レストラン協会関東支部会の総会が、中華料理の「南国酒家」さんで開催されました。総会の司会を頼まれていたので、おめかしして出席しました。

  (以下、台詞) 「それでは、定刻となりましたので、ただ今より、国際観光日本レストラン協会関東支部会・第31回定期総会を始めさせていただきます、が、おあとに素晴らしい御料理が控えていますので、総会は、チャッチャッと済ませちゃいましょう! あ、スミマセーン、間違えました、チャッチャッとは撤回します! 総会の審議は丁寧に、しかしやっぱりスピーデイーに、進めてまいりたいと存じますので、よろしくお願い申しあげます!」

 「チャッチャッと」はもちろんジョークで、わざと間違えていることが、わかるように言ってみたところ、五分の一くらいの方に、微妙な温度でウケていただいたようです。

  私は司会を頼まれることが結構あるのですが、必ずジョークを言うようにしています。初対面の人がたくさん来る時は、座を和ませる必要があるからです。

 芸人ではないので、全員にウケる必要はないのですし、大ウケする必要もありません。ただ、その場を和ませたい、というこちらの気持ちがわかってもらえれば、それでOKと思っています。それに自分の方も緊張が解けて、やりやすくなります。

  だいたい、ジョークを言わない人は人気がありませんよね。いろいろな団体に、つきあいで、顔を出しますが、トップの人(会長・理事長・組合長など)がジョークを言う人かどうかで、その団体の雰囲気がかなり違ってきます。欧米人はスピーチをする時に、たいていジョークを言いますが、白人社会では、団体や職場のリーダーがジョークを飛ばすのは「お約束」となっているからです。

 是非、接客の現場でも、駄洒落でも構わないので、やってみたら、と思います。自分とお客様の間の距離感が一気に縮まって、接客が格段にやりやすくなります。お客様との間の、間合いをつかむのが苦手な人ほどやってみたら良いと思っています。ウケなくても、必ず効果があります。

  「ちんや」の接客部員(=仲居)にも「私は、本日こちらの御席を担当させていただきます、A子と申します。またの名を「ちんやの米倉涼子」とも言われております!」と言うように指示しているのですが、今のところ実行した者はいない・・・ようです。

   あ、そうそう、「南国酒家」さんの、御料理のことも書かないとイカンですよね。

  総会の後には、もちろん、素晴らしい御料理が「御約束」ですが、今回、M社長・K総料理長には随分頑張っていただきまして、大変美味しく戴きました。

 特に野菜のコダワりが大変なもので、とても参考になりました。「魚介と日高町産ホワイトアスパラ、四角豆、黄ニラの炒めもの」なんて、野菜の甘みが濃厚で最高でした。御馳走様でした!

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

*国際観光日本レストラン協会については、こちらです。

*「南国酒家」さんについては、こちらです。

Filed under: 飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 10:35 AM  Comments (0)

検索グルメランキング

 このブログの読者の方から、住吉さんのブログは、一日に何人くらいの人が見に来るんですか? とか、どういう経路で入って来る人が多いんですか? とか良く聞かれます。ご自分がブログをやっておいでだと、そういうことが気になるのだと思います。

  実はですね、アクセス解析は、まだ全くしてないんですよ。まだ始めたばっかりだし、どうせ私の知り合いしか見に来てないでしょうし。

 それに、今のところ、「ちんや」の自社サイト(http://www.chinya.co.jp/)から、このブログへのリンクは張ってないんですよ。このブログのスタート当時、ちゃんと続けていけるか、一抹の不安があったので、そのリンクを張らずにおいたんです。

  ところが、そうこうしている内に、いつの間にか、このブログはGoogle検索で上の方へあがって来ていました。SEO対策は何もしていませんが、「浅草」+「ちんや」と入れて検索した場合6位に入っています。このブログより上にあるのは、「ちんや」自社サイトの他は、ぐるなび・グルメぴあ・食べログなど、大手のグルメサイトだけです。

 当事者のブログが上位なのは当然かというと、実はそうでもなく、世の中にはグルメサイトやタウンガイド・観光ガイドのサイトが多数あって、そういうサイトは、SEO対策に命を賭けているので、そういうところと張り合って上に行くのは、当事者でも結構大変です。

 また、「浅草」+「すき焼き」と入れて検索した場合は17位です。個人のブログが、私のより上位に4つほどありますが、当然、じきに追い抜くでしょう。

  うーん。と、いうことは、知り合い以外の人が、既に結構見に来てる可能性がありますね。先日も、このブログの存在を、お教えしていないハズの方が経営している御店のことを書いたら、御礼メールが突然来ました。

 また、30年間連絡をとってなかった同窓生が、やはり検索で入って来て、投稿してくれたりもしました。

  で、あれば「ちんや」の自社サイトからこのブログへ、そろそろリンクを張るタイミングかもしれませんし、そうなれば、アクセス解析もしてみる価値がありましょう。このサイトを管理してくれている、U社長と相談しないといけません。

  実は今日5/19が更新80日目なのですが、100日目位を目途に、その辺りに取り組んでみようかな、と思っている、今日この頃です。

  まずは、おかげ様にて、今のところ順調に更新中! ということで、読者の皆様に御礼申し上げます。敬具。

  さて、ここで住吉蛇足卿による、蛇足コーナーですが、Google検索で、「すき焼き」+「市川海老蔵」と入れると、なんと、このブログが1位に表示されます!

  光栄だなあ、じゃなくて、当然ですよね、関連性が深いからねえ。ひひひひ。

Filed under: ぼやき部屋,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 10:01 AM  Comments (2)

快食療法

 5/19に、国際観光日本レストラン協会関東支部会の総会が、中華料理の「南国酒家」さんで開催されます。総会の司会を頼まれたので、おめかしして出席しないといけません。

  ところで、おめかしはさておき、去年の総会から1年間、私が続けてきたことがありますので、今日はそれをご紹介します。続けてきたのは、「快食療法」です。

 「快食療法」は「健康外来」を開設している、横倉クリニックの横倉恒雄先生が提唱されているプログラムです。レストラン協会の常務理事のA子女史(=「銀座朝川」の女将さん)が横倉先生と親しく、そのコネクションで去年の総会の時に、お越しいただいて、講演をしていただいたのです。

  さて「快食療法」といっても、その方法はいたってシンプルです。要点は2つで、
・こうしないと、こうあらねば、と自分を禁止・抑制することをできるだけしない。
・自分にとって心地いい事を1つでも始める。以上です。 

 そして、その「心地いい事」=五感を刺激される事、の中の、最強の事が、おいしい食事、なのです。

  日頃のストレスから脳が疲労している人は、その疲労をとることが、健康の秘訣・生活習慣病の防止になるそうです。おいしい食事⇒心地いい⇒脳疲労がとれる⇒体も健康に、という展開です。

 この説にしたがうと、ダイエットのために、我慢してケーキを1切れしか食べない、というのは良くないのです。むしろ、食べたければ、丸ごとホールで食べて、脳がこの上なく幸せになるよう快感を与えるべきで、その方がむしろ、脳が健康になり⇒結局体も健康になって、ダイエットもできる、という説で、チョッとビックリですが、横倉先生は、臨床のお医者さんなので、症例もきちんと積んで、実証しています。

  1日に少なくとも1回は、「ああ、おいしかった」と心底感じる食事をとることが大事だそうです。逆に、腹が減ってもいないのに、無理に食事をとるのは、良くないことだそうです。

  この説にしたがって、私は夜食を、「ああ、おいしかった」と心底感じる食事に設定しました。朝は腹が減らず、日中は何かと忙しく、ゆっくり食事などしていられません。だから、この1年間は朝・昼・夜とも「虫休め」程度の軽いものしか食べていません。そして、仕事を全て終わらせた後の、夜食を大事にしています。

 日によっては、店の肉を買って、私がステーキを焼くこともあります。鍋の時もあります。ヨメがイタリアンもどきを作ることもあります。

 就寝前の大食でもOKだそうです。消化器にとっては、就寝前の大食は望ましくなくても、それより食事で脳が満足するのが優先です。脳にとっては、満腹してすぐ寝るのは、最高に心地いい事です。だから、そっちを優先します。

 現在の私のライフスタイルでは、夜食しかゆっくり食べられませんので、これでOKと思っています。実際3月の人間ドックの結果では、体重が落ちましたし、各種数値も絶好調です。連日連夜大食しているのに、です。

  ブログ読者の皆さんにも、個人名を誰とは申しませんが、オススメしておきます。

  そう言えば、昔の友人が糖尿病専門の医者をしているのですが、その男が結構なメタボなのです。患者に「一緒に頑張りましょう!」と指導しているそうなのですが、大丈夫なのか心配です。医者の人生もストレスありますから、脳疲労しているのかもしれません。

  あいつ、「ちんや」に食べに来てくれたことがあったなあ。その時は「ああ、おいしかった」と心底感じたハズなんだけど、きいたかなあ。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

*横倉恒雄先生の著書「脳疲労に克つーストレスを感じない脳が健康をつくる」(角川SSC新書)については、こちらです。

Filed under: 飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 9:53 AM  Comments (2)

ヤバイすき焼き後日譚

 このブログの4/29号「ヤバイすき焼き」の、登場人物ご本人様から、ご投稿をいただきました。

 「住吉さん、本当にすき焼き美味しかったです。ただ美味しいだけじゃ無くて、なんだかとてもリアリティのある美味しさ。あれは何だろう…と考えていたのですが、昨日の母からの電話で判明しました。

「ちんや」さんでお肉買ったから、取りにいらっしゃい。

あ、成程そうか実家に居た頃偶にちんやさんのお肉食べていたからだ!と。美味しく楽しい一時を本当にありがとうございました。」という御投稿でした。

 浅草の地に、店を代々続けてさせていただいていて、こういう話しを聞かせていただけるのは、何より有り難いことです。味覚が継承されていることほど、我々にとって、有り難いことはありません。同時に、安易に味を変えてはいけないなあ、と思う瞬間でもあります。ご投稿ありがとうございました。

 ところで、この時の、ご自宅での召し上がり方ですが、

 「ブログで見た様に、味噌を少し隠し味で入れてみました。美味しかったです;-)」という方法だったとか。

 そうです! 鍋に味噌を入れるのも「有り」なのです。というか、明治初期には、味噌を入れる店の方が多かったと思われます。このブログの3/3に書きました通り、今でも横浜末吉町の「太田なわのれん」さんは入れていますし、牛鍋ではありませんが、日本堤の桜鍋の「中江」さんも入れてます。両国の猪鍋の「ももんじや」さんもです。味噌入りも旨いものですよね。

 また、4/11号に書きました通り、神田仏蘭西料理「聖橋亭」さんでは、ビーフシチューのソースに、隣の、神田明神の参道にある甘酒屋さんから、糀をもらって入れているそうですが、これも、すき焼きの鍋に、やはり発酵食品である味噌を入れるのと、同じ作戦です。ハッキリ言って、大スキです、そういう傾向の味。

 「すきや連」の事務局をしているせいか、最近、こうした御料理を出している御店のご主人さん達と、いろいろお話しする機会が増えました。そういう会話の中で聞いた情報を是非皆さんにご紹介したい、というのも、このブログを始めた動機の一つであります。ご愛読いただければ、と存じます。

 どの御店も、「ヤバい」ですよ!

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

納豆と市川海老蔵

 昨日5/10のブログに、ちんやの肉の仕入れ方針について書きましたが、その中に書いてある、「熟成をすると、なぜ肉が旨くなるのか」、が良くわからない、というメールが、「浅草うまいもの会」の、K子会長から届きました。

 そこで熟成すると肉がなぜ旨くなるかの説明ですが、

「熟成すると、牛の体内の酵素の働きで、タンパク質がアミノ酸に変わります。」

「1ヶ月置いておく間に乾燥が進み、相対的に水分が減って、旨味成分が濃縮されます。」

「牛を解体しないで、丸ごと熟成させた方が、乾燥が進むので、解体してパッキングしてから熟成させるより、旨いです。」

 以上がその説明ですが、このご説明でご理解いただけない場合も多いです。先日、雑誌のご取材があって、熟成と肉の旨さについてご質問があったので、上記のようにお答えした時も、そういえば、取材嬢は「?」という感じでした。

  旨さについては、熟成がポイントなのですが、そこがわかりにくいと思う方が多いようです。どうもバケ学用語を口頭で言うと、文系人にはトッツキにくいかもしれません。「そんなことより産地はどこなんですか?」と文系的なことを聞かれると、産地にあまりこだわっていない我々としては、チョッとがっがりしてしまいます。

  そこで! 熟成について、わかりやすく説明する作戦を最近考えついたので、今回のご取材で使ってみました。それは、「熟成させたお肉と、そうでないお肉は、納豆と、生の大豆の違い位の違いがあります。」と例える作戦です。これはわかりやすいようです。

 化学的にも、納豆菌という細菌の作用でタンパク質がアミノ酸に変わるのと、牛の体内の酵素の働きで、タンパク質がアミノ酸に変わるのは、似ていると言えなくもありません。かなりザックリ、ですが。

 以前、「銀座4丁目スエヒロ」のU社長が紹介して下さった、熊本県畜産試験場の先生も、「熟成した肉は、生鮮食品ではなく醗酵食品とみなします。」と言っておいででしたので、あながちハズレた例えでもないでしょう。「納豆と大豆」=「熟成肉と肉」、少し誇張した例えですが、わかりやすいので、まあご勘弁いただいて、使おうと思っています。

 「納豆と大豆」=「熟成肉と肉」 ついでに、もう一つ例えると、「住吉史彦と市川海老蔵」

 おっと、間違えた。最後の例は、完全に同等のケースだった、ですよねえ? 理系の皆さん。 

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

本物に会えるまちー台東区新観光ビジョン

  私の地元・東京都台東区の「新観光ビジョン」が制定され、区の「新観光ビジョン策定委員会専門部会」の委員をしていた、私の許へも届けられました。100ページを越す厚みのある本で、その他に概要版も付いていて、立派です。さしたる貢献もできませんでしたが、本が届くと、ひと仕事させていただいた感慨があります。

  この「ビジョン」の中で、台東区の目標とする姿は、「本物に会えるまち」と表現されています。いわく、

 「本物とは、心が作りだすものである。(中略)台東区には、心がある。だから台東区には、本物がある。台東区は、本物に会えるまちである。」と書かれています。

 行政のつくるペーパーとしては、結構つっこんだモノ言いですが、私はこれで良いのでは、と思っています。専門部会の席上でも、「ほんもの」という、厳密に定義しがたい表現を使って大丈夫なの?というご意見がありましたが、私は「ほんもの」という表現を入れることに賛成いたしました。

  ネット上にはあまり詳しく書けませんが、食べ物の世界には、「贋物」と言って構わないものが横行しています。人々が、「ほんもの」を求めて旅に出る(=観光をする)という風になったら良いな、と思います。いや、このままで行けば、そういう風になるのが必然かもしれません。  

  その時、良心的な職人さんが今でも多数住む台東区は、きっと訪ねてみたい土地の候補の、上位に入ると思います。他の委員の皆さんに、そう申し上げたところ、おおむねご賛同いただけたようでした。

  ところで話しは逸れますが、専門部会の部会長だった、東京工業大学准教授のS先生と雑談をしている中で、奇縁が判明しました。S先生のお父上と、湯島のすき焼き屋「江知勝」さんの先代が、とても親しく、先代の生前は家族ぐるみのおつきあいをしていたので、先生自身何度も「江知勝」のすき焼きを召し上がった、というのです。

  「先代が亡くなってから、かれこれ8年くらいたちますけど、その後女将さんやご家族がお元気か、住吉さん、ご存じですかね?」と先生からお尋ねがあったので、

 ええ、まったくお元気でいらっしゃいますよ。しばらく会っておられないのなら、先生、是非今度一緒に、「江知勝」さんへ食べに行きましょう、ということになりました。

  そう言って、お別れした後、S先生との「江知勝」行きは、まだ実現していませんが、「ビジョン」発表を機に、是非先生をお誘いしないといけません。「ほんもの」を訪ねて「江知勝」へ!

  あ、そうか、「江知勝」さんは文京区だったか。 マズイぞ、それは。

 「ほんもの」に会えるかなあ?  

  本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

*台東区の「新観光ビジョン」については、こちらです。

*「江知勝」さんついては、こちらです。