会社を継ぐ、という人生⑤
母校・慶應義塾中等部(=慶應大学の付属中学校)の「キャリア講座」に出講します。
これは毎年開講されているレッキとした正規の授業でして、中学生のために、OBが自分のキャリアについて話すのです。
お引き請けしまして、私は、その演題を「会社を継ぐ、という人生」にしました。
10人の講師が出て、生徒さんは、その中から選択できるのですが、私以外は学者さんとか、弁護士さん・お医者様・アナウンサーのお姐さんとか、当然ながら非世襲組です。
当初世襲社長であることを鮮明にしたものかどうか、迷いましたが、この際ハッキリさせてお話しするすることにしました。
生徒さんの集まり具合は、どうやら10人の中で真ん中辺りのようです。
原稿が出来ましたので、UPしたいと思います。
この話しは長いので、8回に分けてUPします。今日が、その第5回です。それではどうぞ。
<以下本文>
さて、ここでもう話しは、経営者に必要なもう一つの能力「発想力、アイデイアを出す力」に入ってきています。
ええ~?!そんなことは広告代理店にやらせれば良いって聞いたよ!っていう人がいるかもしれません。違います、全く違います。
商品を作ってしまってから、売り方を考えたのでは遅いのです。商品開発の最初の段階から、どんな人をどんな風にハッピーにする商品なのか、考えに考えぬいて動き出さないといけません。
今の世の中をよく観察して欲しいのですが、商品は在り余っていますね。
昔は違いました。日本の国は1950年代から1970年代までに「高度成長」を成し遂げました。この頃は毎年10%以上所得が増えたのです。70年代のオイルショックでいったん成長は減速しますが、80年代には再び成長を始め、やがてそれが過熱して、土地や株が急に上がって、「バブル経済」という状態になりました。
これが20世紀後半の日本経済の動きです。
その「高度成長」時代に、テレビ・洗濯機・冷蔵庫の家電3品目は三種の神器』と言われ、国民は争ってそれを買い求めました。
そうです、逆に言うと、高度成長以前の時代は、テレビ・洗濯機・冷蔵庫を持っていないご家庭が多かったのです。今、これらを持っていない家はまずありませんね。
1960年代になると、カラーテレビ (Color television)・クーラー (Cooler)・自動車 (Car) の3Cが新・三種の神器と言われました。さっきテレビと言ったのは白黒テレビだったんです。この3Cも今や持っていない家は少ないですね。
そう、現代日本社会にはモノが溢れています。モノが溢れてしまって、人々がさらにモノを買おうとしないから、デフレに成ってしまっているのです。
さっきの課題で、「品質が良くて安い商品」が売れる商品と答えた人は、「高度成長」の時代なら成功できたでしょう。なぜならモノが足りなかったからです。商品を作れば作っただけたくさん売れましたから、安く売っていても会社は大きくなりました。そのやり方を「薄利多売」と言います。そのやり方で社員が増えて、みんな給料が貰えてハッピーでした。だから安い商品を売っていてもデフレにならなかったのです。
しかし、今は違います。今売れるのは「品質が良くて、一番安い商品」だけですから、この国では安売り合戦・安売り競争が起きています。
この競争に負けた会社は倒産しますから、そこで働いていた人達は失業者になります。
では競争に勝った会社がハッピーかと言うと違います。値下げをするために、従業員の給料を下げたり、リストラをしたり、あるいは仕入れ先の仕入れ値を値切ったりしますから、全然ハッピーでありません。勝った方でもアン・ハッピーなのです。それが、今のこの国です。
だから、経営者は「安い」以外の、何か他の価値を世の中に提案しないといけません。どんな商品を作って、どんな人を、どのようにハッピーにするか、それを思いつく能力「発想力、アイデイアを出す力」が、かつてなく大事な理由は、そこに在ります。駄洒落でもデフレよりはマシなのです。
「発想力、アイデイアを出す力」が経営者に無い場合、あるいは、そういう仕事はそもそも経営者の仕事じゃない!と思っている場合は、その会社はデフレの泥沼に引き込まれます。そして世の中全体にそれが連鎖していくんです。それはとても怖いことだと覚えて下さい。
<この話しは長いので、引き続き明日もUPします>
追伸①
藤井恵子さん著の単行本『浅草 老舗旦那のランチ』に登場させていただきました。
不肖・住吉史彦が、「浅草演芸ホール」の席亭さんや、「音のヨーロー堂」の四代目とランチをしながら、浅草について対談する、という趣向です。
他にも20人ほどの、浅草の旦那さんたちがリレー対談で形式で登場します。
是非ご購読を! 平成24年6月3日、小学館発行。
ご購入はこちらです。 (できればレビューも書いて下さいね!)
追伸②
「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。
この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。
その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。
現在の笑顔数は334人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。
皆様も、是非御参加下さい!
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.045日連続更新を達成しました。毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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