キッチュの花道③
さて、この話しは、おとといから続いています。
仲見世という、キッチュの花道にあって、かたくなに職人気質に固執している御店もあります。
代表例は「助六(すけろく)」さんです。
「助六」さんは江戸末期の慶応2年に創業された、江戸趣味小玩具の御店です。日本で唯一、小玩具がご専門で、ミニチュアの可愛いくて、縁起の良いものばかりを扱っておいでです。
間口一間の小ぢんまりした店内には、そうした豆玩具が3000点以上、所狭しと並んでいます。ダイアナ妃やヒラリー国務長官も訪れたことがある、江戸情緒あふれる御店です。
その御店を、今は五代目が継いでおいでですが、スゴいのは、先代=四代目の終戦直後のエピソードです。
先日五代目が出された御本を読んで知ったのですが、極度の物資不足の時代のこと、皆が闇商売に走る中、「助六」の先代だけは、江戸趣味小玩具しか売らなかったそうです。
7年間全く売れなかったのに闇商売をせず、玩具だけを店に並べ続けたそうです。
戦争で東京の下町は破壊し尽くされ、今日を生きるのに皆が必死で、闇物資を売るのが当然な時代に、江戸趣味小玩具しか売らなかったそうです。
脱帽ですよね。
この御店に玩具を納めていた職人さんの中には、人間国宝に推薦されながら断った人もいたそうです。
ですので、当然こういう御店は、キッチュの花道にあって、かたくなにキッチュ的なものを拒絶しておられます。職人さんは素材のマテリアルにコダワリますから、アイデア勝負は以ての外、でしょう。
他にも職人路線の御店としては「舞扇の文扇堂」さんも在ります。「舞扇」というからには、日舞に出演する舞踊家の方が、踊る時に使う扇の店です。
和傘専門の西島商店さんもあります。
仲見世へお越しの際は、こういう御店もご覧ください。こうした御店は、何故か皆、間口がやたら狭いですね。うっかりすると見逃します。
要するに、仲見世はキッチュなグッヅが面白いし、また職人さんも素晴らしい。
両者が同居できるのです、だって、ここは浅草ですから。
追伸
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本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて776日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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