飲み物世界遺産
実は最近弊店の、ドリンクの品揃えを再検討しております。
従来より地元志向を強化して、「どこにでもある物」より、「地元だけにある物」を売っていこうと考えつつあります。
で、思いつきましたのが、ラムネ。
あの懐かしくも、スパークリングな飲み物です。
残念ながら、三ノ輪のメーカーさんは廃業してしまいましたが、浅草から隅田川を渡ってすぐの所に、「興水舎」さんという、大正13年創業の老舗メーカーさんがあり、仕入れさせていただくことになりました。
ところで、ラムネって何語か、ご存じでしたか。
英語です。レモネードという英語が訛ったものです。
ですので、当然ラムネは英国生まれです。「興水社」のK社長が見せて下さった、「日本清涼飲料業界史」なる、厚さが8センチもある御本をひもときますと、1843年に英国人のハイラム・コッドという人が「玉栓瓶」を開発し、その瓶にレモネードつまり炭酸水にレモン味を付けたものを詰めたのが起源だそうです。
この「玉栓瓶」に詰められていることが、ラムネの大きな特徴です。
ラムネ瓶には、上から5分の2ほどの位置にくびれが設けられており、口とくびれの間に「ラムネ玉」と呼ばれるガラス球が入れてあります。
この瓶にラムネ液を詰めて、すぐさま瓶をひっくり返すと、内部の炭酸ガスの圧力で「ラムネ玉」が口まわりのゴムパッキンに押し付けられ、瓶が密閉されます。つまり炭酸飲料の中の圧力だけを利用して密封する仕組みなのです。
ラムネ瓶が、あのようにユニークな形をしているのは、この瓶詰め方法を採用しているからだったのです。
でも英国人は、このユニークな形の瓶を見捨ててしまい、今は日本人だけが使っています。
見捨てられた理由は、その後に、王冠で炭酸水に栓をする方法が開発されたからです。そちらの方は瓶の形がシンプルです。一方のラムネは、瓶の形がユニークですから、当然造るのにコストがかかりますし、また洗浄も面倒です。
しかし、なぜか、下町の日本人はラムネを造り続けています。しかも、瓶をリサイクルさせて造り続けています。ちょっと感動します。
ラムネ瓶は、王冠を使う普通の瓶と異なり、栓(=玉)まで含めてリサイクルが可能です。カンペキな「リターナブル容器」と言えます。
この厄介な瓶を使い続けていることは、日本人のmottai-nai精神の一つの現われ、と言って良いのではないでしょうか。
いや、「飲み物世界遺産!」と言っても良いと思います。
まもなく「ちんや」に登場です。請う御期待。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて597連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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