草の香り

 「明後日に予約していた○○(お客様の御芳名)ですが・・・」という電話がかかってきました。

 「していた、とは過去形だなあ、またキャンセルかなあ」と思いきや・・・

 「1週間延期して下さい、その頃には道路が復旧するらしいので。」

 嬉しいじゃありませんか。復興するぞ、ニッポン! さて、

 3/23に開催を予定しておりました、

 「すきや連」分科会 日本の牛肉研究会 その第二弾

 「中国山地の完全自然放牧牛を もりもり食す会」

が地震のため、大変残念ながら中止になりました。

 この会で使うつもりだった肉は、島根県大田市「小山地区放牧の会」から届きました。

 この牛は、とても珍しい牛です。5年余に渡って、夏山冬里方式ではなく、周年(=完全)放牧された黒毛和牛です。夏山冬里方式の場合は、冬は牛舎に入れますが、この牛の場合は冬も放牧のままです。

 放牧ですから、エサは草です。本来牛のエサは草ですから、当然と言えば当然ですが、他の和牛は、ほとんど穀物飼料与えています。草を食べた肉牛は、少数派です。

 で、その草がどういう草かと言いますと、栗畑や梨畑、それに里山の土地に生えている草を食べて生きてきたそうです。

 そういう珍しい牛なので、すき焼き関係者や報道関係の方にご案内して、皆で試食する予定にしていたのですが、中止です。これでは牛も浮かばれません。

 生産者の方から「御店で召し上がって下さい」と連絡があったので、一部を向笠千恵子先生(「すきや連」旗振り役代表)に送り、後は、私と「ちんや」スタッフで食べました。

 食して、やはり中国山地の、草の香りがただよいました。

 震災の最中、命をいただくことの重みが、平静にも増して感じられました。

 合掌。

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて389日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 「ちんや」創業130年記念サイトは、こちらです。「すき焼き思い出ストーリー」の投稿を募集しています。

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