デシ男
お客様のご注文をうかがっていて、会話がうまく成立しないことがあります。ある夜席の予約のお客様から、
すき焼きのセットを用意しといて!
と注文されたことがあるのですが、弊店のメニュー構成上、夜席は「すき焼セット」を置いていません。弊店のメニューは、
①すき焼単品=すき焼だけで、何も付いていない
②すき焼コース=すき焼の前に前菜やさしみがあり、お食事やデザートも付く
の、2本立てです。
昼席の場合、すき焼にお食事・デザートだけが付いた、
③昼席のすき焼のセット
がありますが、それを夜に注文されると困ります。そこで、そう申し上げると、
「何言ってんだ!この前オタクに行ったけど、夜もすき焼きのセットがあったぞ!すき焼きのセットが無いなんておかしいじゃないか!」とご立腹の様子。
険悪ムードで、やりとりをしつつ、よくよく聞いてみると、その方の定義では、
①お肉
② ザク
③タマゴ
の3者がセットに成ったもの、つまり弊店で言う所の、すき焼き単品が「セット」であるので、当然、それは夜でもあるはずなのです。「単品」と言った場合、その人の定義では、肉だけのことを言うようなのです。それで話しが噛み合わなかったのです。
最近パスタ+サラダ+デザート+コーヒー程度の品数のメニューを「コース」と表示している店も少なくありませんから、それが「コース」の相場になっているのかもしれませんね。
結局、その方の定義をこちらが理解したので事なきを得ましたが、その御方があまりに、自説をぎゃあぎゃあと主張なさるので、あやうくケンカになるところでした。
店としては定義がわかるように表示しているのだから、自分の勝手な定義で注文しようとしていただくと困るよなあ、と思っていたら、その真逆のケースを笑いものにしている、コントを発見しました。
それは、天才・志村けんの「デシ男」というキャラクターです。
「デシ男」というキャラクターは、右も左も、いちいち「箸の持つ方」「その反対」と確認しないとわからない男(=志村)です。その男が様々な職業に就き先輩から指導を受けるのですが、やる事すべてが珍妙な結果に終わり、最後はクビになる、という展開のコントです。
緊張すると「〜です」を「デッシ」と言ってしまう癖があり、「デ」に強いアクセントが付きます。去年暮れに見たTV番組では、その「デシ男」が喫茶店の店員になっていました。
そこへ「ダチョウ倶楽部」の肥後扮する客がやってきて、コーヒーを注文します。コーヒーにミルクが付いていないので、
「ミルクも持ってきて!」と注文します。
すると「デシ男」志村は「デッシ!」と注文を受け、やがて200cc入りの大きなコップに、なみなみとミルクを注いで運んで来ます。
コーヒーに入れるミルクが欲しかった肥後は、怒って、
「違うよ、違うよ!これじゃあ牛乳でしょ!オレが欲しいのはミルク!」と言いますが、デシ男は受け付けず、
「当店では、これをミルクと言います!デッシ!」そして、注文伝票に「ミ・ル・ク」と書き込みます。
肥後はさらに怒って、「書くな!書くな!牛乳は要らないよ!オレが欲しいのは、コーヒーに入れるヤツだよ!」と叫びます。
するとデシ男、ポケットから小さいコーヒーミルクのパッケージを取り出し、
「ああ、これなら当店では牛乳と言います。これはサービス デッシ。」と展開していきます。
その店のメニューにおける、「ミルク」と「牛乳」の定義を、客の側が理解できず、要らない物の代金を請求されてしまう、というあり得ない展開が、笑いの眼目です。
このコントを見ていて私は、さきほどの自分の会話を思い出しました。
「それなら当店では、すき焼き単品と言います、デッシ!デッシ!」
追伸
1/30実施予定の「ちんや すき焼き通検定」の、受検申込みの受付を始めました。早速応募メールが来ていて嬉しいですね。
詳しくは、このブログの22年12/25号をご覧下さい。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて328日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
「ちんや」創業130年記念サイトは、こちらです。「すき焼き思い出ストーリー」の投稿を募集しています。
Twitterもやってます。こちらでつぶやいています。
*私が実行副委員長をしているイベント=「たいとうクイズラリー」については、こちらです。
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