横座り

 12/4に国際観光日本レストラン協会で旧知の、Nさんご夫妻が来店されました。Nさんは「神田仏蘭西料理聖橋亭」のオーナーさんです。

 食事終了後、Nさんが「店内を見物したい」と御所望でしたので、勿論喜んでご案内しました。するとNさん、流石はプロのレストラン・オーナーです、巻尺を持参されていて(!)、そこらを計り始めました。

 机や椅子の、大きさや高さを計られて、やがて、「ちんや」の机がさほど大きくないことに気づかれました。一般に老舗の、すき焼き屋さんの机は大きいことが多く、時にやたらとデカいことがありますが、それと比較して、どうも、「ちんや」の机が大きくないことに気づかれたようです。

 そうなんです、「ちんや」の机はさほど大きくなく、幅1200×奥行き700mmで、横に長いのです。

 机がタテヨコとも大きければ、たしかに大きい皿を置けるので、見栄えのする盛り付けができます。「ちんや」では、それができにくいので、豪華な盛り付けを目で楽しむことができにくいですね、ザンネンながら。

 でも、逆にすき焼きをする時、具が取り分けやすいです。これが、机が大きくないことの効用です。鍋から自分の分をとりやすいのは、もちろん、机の反対側に居る人へ、具を取り分けてあげることも容易です。

 老舗さんのデカイ机では、そうはいきません。立ち上がって、脇の筋肉がツるくらい手を伸ばさないと、反対側へは届きません。私の見知った範囲では、鍋1台に対して5人一組という御店や、6人一組という御店もありました。当然机はタテヨコとも大きく、向かいの人ははるか彼方です。

 机が大きいと、話しも遠いですよね。向かいの方が近い方が話しやすく、自然と座が盛り上がります。「宴会が盛り上がる」というのが、「ちんや」の机のセールスポイントです。

 一番お気の毒なのは、老舗さんのデカい机をお二人で利用するカップルです。本来6人で使う机を2人で使うわけですから、向かいの相手に声を届かせるには、怒鳴らないといけませんが、しかし内容的に色っぽい内容の時は、怒鳴れない場合があります。

 ある時、さる色っぽい女性に教えてもらったのですが、その御姐さん、そういう場合は、大きい机の片側に、バーカウンターの様に、男女二人で隣あって座るのだそうです。もちろん、その反対側は無人ですから、ものスゴく不自然な景色ですが、それがとても話しやすいのだそうです。

 この「横座り」の光景を見た、その御店の仲居さんは、さぞビックリしたでしょう。そして、

「この二人、大きい声で話しを出来ない二人なのかしら。イヤらしいわあ。」と思ったことでしょう。

 でも、違います。私から御教えしますが、そうではなくて、オタクの御店の机が大きすぎるのです、二人で使うには。

 そう言えば、ウチ夫婦もつきあっていた頃、とあるバーの4人掛けボックス席の片側に、隣あって「横座り」したものでした・・・今は昔・・・

 本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて281日連続更新を達成しました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。

 「ちんや」創業130年記念サイトは、こちらです。「すき焼き思い出ストーリー」の投稿を募集しています。

 Twitterもやってます。こちらでつぶやいています。

*「神田仏蘭西料理聖橋亭」さんについてはこちらです。

Filed under: すき焼きフル・トーク,飲食業界交遊録 — F.Sumiyoshi 12:01 AM
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