引っ込まない男
秋の行楽シーズンに入り、大勢様のご来店が多くなっています。
こういうシーズンに困るのは、ごく短時間で食事を済ませたがる、お客様です。1時間以内で済ませたいとか、ヒドい場合は45分で出たい、とか言われます。少人数の方ではなくて、大勢様にそういうご要望が多いので、さらに往生します。
弊店では、実は、お食事時間は90分とっていただくことにしています。百歩お譲りしても、75分は意地でもとっていただいています。
だから、その仕事を60分以下に詰め込んだ場合、しかも大勢様なら、いかにドタバタと荒れた現場になるか、ご想像いただけると思います。
と、申し上げると、一般のお客様はたいてい了解してくださるのですが、ご了解賜れないのが、旅行業者の皆さんです。
あの方々は、自分の建てた旅行日程を崩すのが、よっぽどおイヤなのか、あるいはそもそも料理屋風情に、意見を言う権利など無いと御考えなのか、
なんとか60分以内に終わらせろ、それがそっちの仕事だろ、とおっしゃいます。
ところが! そう言われて、ハイそうですね、と引っ込まないのが、住吉史彦です。
「なるほど、ご事情はうかがいました。しかし弊店には、実は時間制限がございまして、そういうケースではご予約をお受けしないことに決まっております。」
ここまで来て、その業者さん、初めてこちらの意志にお気づきになります。そして、
腹をおたてになる場合と、ほお、ひょっとして、この店は結構なコダワリのある店なんだ、大したもんだ、と思って下さる場合と、両方があります、もちろん。
腹をおたてになって、すぐブチっと電話を切ってしまわれた方には、お話しする機会が無かったので、この場で申し上げたいと思いますが、
世の中には、利便性以外の価値・便利さ以外の価値もあると思います。
私は利便性以外の方を目指している男で、「ちんや」は便利さ以外の方を目指している店です。だから、
仕事に関係ない場面では、仲良くして・・・下さいね。
よろぴく。ぴくぴく。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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