技術の普及
今日は浅草寺の「ほおずき市」の日で、ついでにサンギイン選挙とかも行われるそうですが、弊ブログは、後者にほんの少しだけ関係のある話題です。さて、
日本農業新聞が、下のようなニュースを配信しました。
「農水省は、和牛のモモ肉とバラ肉を、しゃぶしゃぶや焼き肉向けにカットする技術の海外への普及に乗り出す。」
「2016年度から3年間かけ、欧米やアジアから料理人50人を日本に招き、独特の薄切りなどを教える。海外で和牛のモモ肉とバラ肉の需要は小さく、輸出も少ない。しゃぶしゃぶや焼き肉の消費を掘り起こし、牛肉の輸出拡大に弾みをつけたい考えだ。」
最近和食を世界に普及させるため、海外の職人さんを来日させるというプログラムが盛んですから、おそらく、その肉版を考え出したのが、これだろうと想像します。
私が驚いたのは、この件について、ネットのコメント欄に108件ものコメントが付けられていて、7割方が否定的な意見だったことです。
まず、技術は国内にとどめるべきだというもの。
「日本の文化や技術を外に出して、何かいいいことあったか?」「技術を海外にタレ流すのやめてほしい」
次に、輸出にはつながらないというもの。
「もう海外でも和牛は生産されてるし、どれだけ輸出に繋がるかは疑問」「それよりオーストラリアで勝手に作られてるWAGYUブランドの牛肉の取り締まりした方がいいと思います」
日本人シェフが日本の食材でフレンチを作っていますから、たしかに、それと似た結果に成る可能性はありますね。
それから、輸出している場合でない、という意見。これは業界内の人でしょう。
「国内だけでも足りてないのになんで海外にそんな技術出す必要があるの?まったく明後日の方向むいてる。国産牛の現状知らなすぎ」「国内で和牛不足でえらい価格高騰してるのに輸出するのかよ」
業界内に居るものとして、私も最後の意見を支持せざるを得ません。技術は隠すべきだとは申しませんが、牛が足りていないのに外へ送るというのは非現実的です。
にも関わらず、和牛の輸出が推進されるのは何故か?
TPP対策ですよね。いや、対策をやっているフリ。
海外の農業に負けない「強い農業」が日本にもないと、政府としては都合が悪いのです。
「強い農業」が日本にも在るぞ、と言わんがためのアリバイづくりでしょうね、この政策は。ごく一部の知名度のある産地だけに恩恵が及ぶ結果になると私は想像します。
本気の政策だというのなら、国内の和牛不足を解消する政策もセットで出すべきですが、そっちはお留守です。
ついでに申せば、和牛が不足しているだけでなく、その味がどんどん美味しくなくなっていることについても対策が欲しいと私は思います。
なんだかなあ、です、つくづく。
追伸
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978-4-7949-6920-0 C0095
2016年2月25日発売
株式会社晶文社 刊行
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.325連続更新を達成しました。
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