雷門以北
『大東京繁昌記』を読んでいます。
『大東京繁昌記』は、1927年(昭和2年)の東京日日新聞社の連載企画でした。
芥川龍之介が本所両国を、泉鏡花が深川を、という具合に、当時随一の文士が東京を歩きまわってルポ。さらには鏑木清方・木村荘八といった有名画家が挿画を付けています。豪華なものです。
この年は1923年の関東大震災から4年後、復興につれ、帝都・東京が変わりゆく頃でした。また前年には大正天皇が亡くなって、世相も変わりつつありました。そんな時代を切り取ったのが、この連載です。
私が、中でも注目して読んだのは、もちろん久保田万太郎の『雷門以北』の部分です。
読みますと、浅草の店の固有名詞が14軒ほど列挙されていて、その中には現在「老舗」と言われている店も入っているのですが、「それらはただ手軽に、安く、手っとり早く、そうして器用に見恰好よく、一人でもよけいに客を引く・・・出来るだけ短い時間に出来るだけ多くの客をむかえようとする店々である。それ以外の何ものも希望しない店々である。無駄と、手数と、落ちつきと、親しさと、信仰とをもたない店々である。」と猛批判されています。
浅草生まれの万太郎は震災後も残った「古い浅草」を懐かしみ、「新しい浅草」には手厳しいコメントを送っています。
うーん。
老舗も最初から老舗だったわけではなく、その頃はそういう様子だったのですね。
だいたい「ちんや」も狆の商いが儲からなくなったので料理屋に衣替えしたのでした。最初は「なんちゃって」な料理屋だったに違いありません。
そういう次第ですので、昨今浅草では2020オリンピックが観光客を呼び込むと見込んで「雨後の筍」のような店・「なんちゃって」な店が次々と開業していますが、私はあまり笑わないようにしています。
追伸、
肉の情報ポータルサイト「肉メディア」で、11/11から私の連載が始まります。
題して、「大人のすき焼き教科書」。
弊店でリアルなイベントも企画しています。
こちらから、どうぞ、ご覧下さい。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.079連続更新を達成しました。
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