和牛を食す①
慶應義塾の広報誌『三田評論』の10月号に出演させていただきました。
『三田評論』には毎月「三人閑談」といって、三人の卒業生が対談するコーナーがあるのですが、今月のテーマが
「和牛を食す」で、そこに入れていただいた次第です。光栄なことでした。
以下↓は『三田評論』に載った文そのものではないですが、対談の準備のために書いたものですので、是非お読み下さい。
<やや長いので四日に分けてUPします>
和牛を考えるに当たり、まずは和牛肉が食されて来た環境を考えてみましょう。
「食されて来た環境」とは「和食」という食文化です。和食には次↓のような特徴があります。
・「煮る」という調理方法を好む。
・通常は牛肉を食べることを避け、滋養強壮の為ときおり「薬」として肉を食う。
・生食することを好む。
・箸で食べる。
牛の一生は3~4年なので100年かけて改良すれば、25~33世代分の改良が出来ます。和食に馴染んだ日本人が、そういう改良を続けてきたということを念頭に以下をお読み下さい。
では最初に、日本人がどのような調理方法で牛肉を食べて来たか考えましょう。
日本人は「煮る」という調理方法を好み、牛肉も煮て来ました。水の豊富なこの国の人々は「煮る」という調理方法を発達させて来ましたが、フランスは「焼く」、中国は「炒める」ですね。で、日本は煮ます。
そもそも「煮る」という調理方法は、あらためて申せば水を媒介として食材を加熱する方法です。
「煮る」の決定的な特徴は、品温が100℃を超えないということです、当たり前ですが。
100℃を超えませんので牛肉を煮た場合も80℃から90℃で加熱されます。で、和牛肉はその温度帯で香り物質をたくさん揮発させるのです。
和牛肉は海外産の肉に比べて香り成分の総量が圧倒的に多く、特に「ラクトン類」という有機化合物がたくさん揮発します。桃やココナッツといった果物の好ましい香りを感じさせる匂いですね。
その「ラクトン類」こそが所謂「和牛香」つまり和牛の一大特長であるところの、独自の良い匂いの正体だと、近年の研究で明らかにされたのです。
このように牛肉を煮る、しかも客の目の前で煮るという調理方法が和牛の「香りが良い」という特長を最も楽しめる方法だと言えるのです。どうも、焼き肉屋さんに行った時より、すき焼き屋さんに行った時の方が良い匂いがするような気がするんだよね・・・と感じるのは、不思議ではないのです。
だいたい、すき「焼き」という料理名なのに煮ているのは、一体全体どういうことなんだ?!という超基本的な疑問の答えがここに在るかも!と私は思っているのですが、今日はすき焼きの話しではないので、それはさて置きまして、とにかく日本人の好む「煮る」という方法に最も合う牛肉が選抜されて来たと言えると思います。
次に、日本人がどのような場合に牛肉を食べて来たか考えましょう。
<この続きは、明日の弊ブログにて>
追伸
デパートの催事に出店して精肉の販売をさせていただきます。
どうぞ、お立ち寄り下さい。
催事名:dancyuフェスティバル~dancyu×髙島屋グルメの祭典~
会期:平成27年10月14日(水曜日)~19日(月曜日)
会場:玉川髙島屋 6階催し会場
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.049日連続更新を達成しました。
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