抑制効果

すき焼きって、

甘辛旨! その一辺倒の料理です。

この単調さが永いこと、私の悩みの種でした。

しかし最近私は、この甘辛旨!が利点にも成り得ると考えはじめました。

甘辛旨が強烈だと、酸!苦!も同時に美味しく食べられてしまうのです。

この現象を「味の抑制効果」と申します。

例えば苦~いコーヒーを、佐藤を入れると美味しく飲めてしまいますね、いや、間違えた、砂糖を入れると美味しく飲めてしまいますね。

砂糖を入れたからといって、コーヒーに元々ある苦味物質・カフェインがなくなるわけではありません。しかし苦味と甘みが併存することで、味が抑制されて美味しく飲めてしまうのです。

次にすき焼きに於ける「抑制効果」の事例ですが、「ちんや」のすき焼きに付け合わせとして付けてあるピクルスは、それだけで食べると結構、酸っぱいです。酸っぱ過ぎると感じる方もいると思います。

しかし、すき焼きと一緒だと美味しく食べられてしまいます。味が抑制されるからです。

人が甘辛旨酸苦の五味を揃えて摂取することの重要性は、今更ここで指摘しなくてもと思いますが、酸っぱいものって、あんまり食べたくはないものです。それが、すき焼きと一緒だと美味しく食べられてしまうのです。

すんばらしい。

すき焼きと一緒だと苦味も美味しく摂れます。

例えば、春菊が入っていますが、あれを食用にしているのは東アジアの人々だけです。

西洋人は、菊なんて苦くて食えたものではない・観賞用だと思っていますので、彼らには春菊のことは、

Edible Chrysanthemum Leaves

つまり「食べられる菊」と説明しないといけませんが、そう、このような苦いものが、すき焼きと一緒だと食べられてしまうのです。

すんばらしい。

私なぞは春菊をムシャムシャ生食してしまいます。

苦味ばしって、すき焼きの甘辛旨を抑制して最高だ!というだけでなく、他所のすき焼き屋さんに行って、これをやると係の仲居さんが目を白黒させて驚くので愉快です。ひひひひ。

あ、もちろん、この行為は食品衛生上はNG行為です。

加熱用の食材を、生食するのは安全とは言えないので、こういうことをする前提として、仮に腹が痛くなったとしても決してクレームをつけない・保健所に通報しないという決意を固めておくことが必要です。

さて話しを戻しますが、

このようにすき焼きには強い「味の抑制効果」が在りますので、これを利用して、お客様に酸味・苦味を摂っていただくこと、それを弊社の大方針に据えたいと考えています。それが善だからです。

ここでいきなり「善だ」などと言ったのは、最近この「抑制効果」を善からざる目的に利用している輩が目につくからです。

それは、日本スペイン交流400周年で流行りの、スペイン・バル。

料理が全てしょっぱいです。

スペイン人って、あんなにしょっぱいものが好きなんでしょうか。勿論違いますね。

ワインの酸味が料理の塩味を抑制して美味しく食べられることを狙っている、つまり、

ワインをたくさん呑みたくなる⇒呑ませて売り上げを造ることを狙っているのです。

流行りを追って参入してきた連中の考えそうなことです。

ワイン好きの方なら、あの料理でも、まあ、良いのでしょうが、下戸の人が行くと悲惨です。

スペインという国についてゲンメツしてしまう可能性すらあります。国家間の友好関係を損ないます。

これが交流400周年の成果とは。トホホですね。

支倉常長も嘆きましょう。

 

追伸

すき焼き思い出ストーリーの投稿を募集しています。

すき焼きは文明開化の昔から、日本人の思い出の中に生きてきた料理です。でも残念ながら、その思い出話しをまとめて保存したことはなかったように思います。

ご投稿くださったものは、「ちんや」創業135周年を記念して本に纏め、今後店の歴史の資料として、すき焼き文化の資料として、末永く保存させていただきます。

どうぞ、世界に一つだけの、すき焼きストーリーを是非、私に教えて下さい。

既にご応募いただいた、50本のストーリーはこちらです。

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.937日連続更新を達成しました。

Filed under: すき焼きフル・トーク,ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 12:00 AM
トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

コメントはまだありません »

No comments yet.

Leave a comment





(一部のHTMLタグを使うことができます。)
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">