衣を通して江戸を知る
㈱竺仙の社長・小川文男さんの、
「衣を通して江戸を知る」という講演を聞きました。
日本橋の竺仙(ちくせん)さんは、天保13年のご創業。伝統の技法を守りながら現代の感覚に合わせた魅力的な着物を発信し続けておられます。浴衣があまりにも有名ですね。
当代は五代目で平成5年2月に代表取締役に就任されたそうです。私は「東都のれん会」で御一緒させていただいていますが、最近どうも、中央区・日本橋でこういう催しが盛んなような気がします。
日本橋辺りは再開発が目白押しで、私などはたまに出かけて工事現場を通りかかると、目がくらむような気がしますが、その一方で、この講演のように老舗を見直すことも行われています。
片や台東区は、街の「見た目」が古いから、それで伝統が在ると安心してしまっているのかもしれませんね。
伝統と申すものは、建物に宿るわけではなく、人に宿るものですから、安心していただいては困るのですが、それは今日はさて置きまして、小川さんの話しです。
江戸の人々は、どこに粋を求めたのか、です。
それも、「竺仙」さんが開業したのは「天保の改革」の真っ最中で華美な格好をすると幕府から弾圧された時代でした。その時代に、どこに粋を求めたのか、がテーマです。
一つの方法は、小紋の模様(点や線)を究極まで細かくすることでした。
染める点をどんどん細かくして行って、その点を無数に染めますと、遠くから見た場合は無地に見えるのですが、近づいて見ると小紋が染めてあることが分かります。無地に見えるので華美な模様とは言われないで済むのですが、実は工芸技術を極限まで競っている代物です。
厳しい時代にあっても、人々はファッションを諦めることはなく、こうした着物を買い求めたのです。粋ですね。
そうした小紋を造るための型紙を、「竺仙」さんは所有していて、太平洋戦争の時は、型紙を持って逃げたそうです。
現代では職人さんの数も少なく、人件費も高いので、こうした着物を安く造ることは難しくなりましたが、世界中にこうした技術があることを広めて、高く買って貰えるようにして行く必要があるだろうと思いました。
勉強になりました。
追伸
『日本のごちそう すき焼き』は、平凡社より刊行されました。
この本は、
食文化研究家の向笠千恵子先生が、すき焼きという面白き食べ物について語り尽くした7章と、
全国の、有志のすき焼き店主31人が、自店のすき焼き自慢を3ページずつ書いた部分の二部で構成された本で、
この十年の「すきや連」活動の集大成とも言える本です。私も勿論執筆に加わっています。
是非是非お求めください。
弊店の店頭でも販売しますし、こちらからネットでも購入できます。
是非。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.851日連続更新を達成しました。
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