花崗岩
広島の花崗岩と言いますと、水や酒造りに詳しい人なら、すぐ、
軟水が湧き出る所⇒「女酒」が出来る所
と思い浮かべることと思いますが、今後当分は酒のことなどより「土砂災害の危険地帯」と考えないといけないようです。
まずもって今回の水害に遭われた広島の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
さて今日は水の話しですが「ヨーロッパの水は硬水、日本の水は軟水」とよく言います。そうなる理由に花崗岩が関係あるのです。
ヨーロッパは石灰岩が多い地質ですが、石灰岩は水が浸透するのに時間がかかります。水がゆっくりと石灰層を通るので、その間にミネラル成分がたっぷり水に溶け込みます。これにより硬水に成るのです。
地形的にもヨーロッパは山から海まで傾斜のゆるやかな地形が広がっていますから、水がゆっくりと進みます。
「エビアン」(硬度304)を飲んで、おなかを壊した経験がある人は、そういう外国の水が合わない体質の人なのです。
さて対するに日本は花崗岩で、花崗岩は水の浸透が早いですので、ミネラル成分が水に溶ける時間がないです。結果軟水に成ります。
そして、もう1点、重要なことに日本は山から海までの傾斜がきつく、起伏の激しい地形です。そのせいで山から海まで水が流下する速度が早いので軟水になるのです。
軟水の話しを続けます。この軟水の地・広島で、明治30年(1897)、日本の醸造業を大進歩させる「軟水醸造法」が誕生しました。
軟水はミネラルが不足しているせいで醗酵が早く進まず、江戸時代には酒造りをする人達は硬水を探し求めていました。
しかし逆に考えますと、時間をかけて丁寧にゆっくり醸し出す方法なら適していると言えます。
その、ゆっくり醸し出す「軟水醸造法」が、安芸津町出身の広島杜氏・三浦仙三郎によって開発されたことにより、日本の酒造りは、柔らかさ・芳醇さ・旨味を重視する方向に大転換を遂げた、という次第です。
今でも独立行政法人・酒類総合研究所は広島県東広島市に在ります。
この、山から海までの傾斜がきつく、花崗岩で出来た広島、土砂災害の危険な広島、その地で酒造りが進歩したという歴史は、全ての日本人が知っておきたい歴史だと私は思います。
起伏が激しいのは広島だけではありませんね。日本全体がそうです。
この住みづらい国に於いて、むしろ住みづらい国だからこそ、文物が発展してきた、人の業が発展してきた、と言えないでしょうか。
八百万の神々は、どうも、意地が悪い奴らなのだと思うのです。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.636日連続更新を達成しました。
毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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