ぬる燗
ぬる燗の季節ですね。
私個人は基本的に、50℃くらいで酒を飲むのが好き=つまり熱燗党ですが、一年中熱燗党だというわけではなく、春・秋の陽気の中では、ぬる燗をしたくなります。
ですので、上等な酒=吟醸酒=冷蔵して飲むに限る。
という最近の、画一的な風潮に疑問を抱いておりますが、そのことは今日はさて置きまして、そうそう、ぬる燗の季節です。
ですので、ぬる燗用の御酒を売ることにしました。しかも40℃で飲んでいただきたい、という製造側の希望をお客様に伝えつつ売ることにしました。
売りますのは、茨城県石岡市「白菊酒造」さんの「霞の里純米酒」です。
60%まで削った茨城県産の酒米「ひたち錦」と、筑波山水系の仕込み水を使用して造られていて、おだやかな飲み口です。
「白菊」さんの御酒は、おだやかな感じのものが多く、逆に申しますと、特徴が出にくいですから、提供の仕方で特徴を出して行くのが良いわけで、それで今回、
「ぬる燗用」「40℃でお召し上がり下さい。」とメニューに明記して売ることにしました。
そういう展開が可能なのは、日本酒ならでは、ですよね。
燗のつけ方も一工夫してみました。
陶製の壺の中に湯が蓄えられるようになっていて、そこに上から徳利がスポンと嵌められるような構造に成っている容器があるのですが、それを使います。
70℃の湯を入れて、その湯で燗つけしますと、だいたい3分位で35℃位になります。温度計でそれを確認したら、温度計を入れたまま、客席に持って行きます。
後はお客様自身に、40℃で飲むなり、さらにもう少し温度を上げてから飲むなり、考えていただきます。
この状態で置いておきますと、酒の温度が45℃以上にはならず、その状態つまり、ぬる燗の状態がしばらく保てます。なかなか冷えないのです。
そこが陶器の保温性の素晴らしいところです。金属製の器は、すぐ温まりますが、すぐ冷めてしまいますので、飲んでいる内に残念なことになってしまいますが、陶器は違います。
酒を燗つけする、という日本の文化・陶器で酒を飲む、という日本の文化を満喫できる瞬間と思います。
そして、それがこの季節だと私は思っています。
お試しあれ。
追伸
ムック本『江戸っ子に学ぶ! 浅草本』に載せていただきました。ありがとうございます。
「枻(えい)出版社」刊行、エイムック2855。
<内容>浅草寺を中心に発展してきた“浅草”は、江戸の文化と今が混在する街で、歴史とグルメと情緒を肌で感じる場所がそこかしこにあります。100年、200年と続く老舗のうなぎ、どぜう、そば、天ぷら、すき焼など和のお店をはじめ、絶妙の味を伝える洋食屋さんや女性にとって嬉しい甘味処など目白押しです。いっぽう、かっぱ橋周辺に足を伸ばせば、木札や手ぬぐい、櫛といった職人の技が織りなす伝統の工芸品に出会うことができます。そこで本書は、浅草をまるごと楽しむために「食・技・遊・祭」の4つを徹底的に紹介しました。また巻頭では、浅草在住のたいとう観光大使をつとめる、なぎら健壱さんといとうせいこうさんに登場をいただき、浅草の魅力を語っていただきました。
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本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.522日連続更新を達成しました。
毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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