トンカツの旨さ

浅草で私が好きなトンカツ屋さんは、寿3丁目の「すぎ田」さんです。
「すぎ田」さんの最寄り駅は大江戸線の蔵前駅で、歩いて行くと10分くらいかかるのですが、30年前までは浅草通りにお店があり、それで今でも浅草料理飲食業組合に入っておられます。個人的にも存じ上げているので、たまに食べさせてもらっています。今月の初めにも、繁忙期に向けて景気を付けようと、ロースカツを目指して行くことにしました。
で、美味しくいただき、そのことを書こうとして、私は悩み始めました。上手い説明が思いつかないのです。
「すぎ田」さんについて雑誌などで語られていることと言えば、
・低温と高温の二つの油で「二度揚げ」すること。
・白木のカウンターが清々しいこと。
・店の清掃が徹底していて、営業は20時で終わるのに、掃除は22時過ぎまでやっていること。
などでしょうか。不思議なことに直接肉について、あまり語っていません。・・・と考えている内に、私も登場させていただいた本『浅草老舗旦那のランチ』(小学館、2012年)に「すぎ田」さんが採り上げられていたことを思い出し、どんな表現だったか、確認してみようと思いました。
本を引っ張り出して、見出しは、
「なんと言っても肉の旨さですね」
となっていたので、「おお!」と思い読み進めましたが、やはり、直接肉について、あまり語っていません。この本を参考にしても上手い説明が思いつきません。
そして、ついでに思ったことは、浅草の店の美味しさって、表現し辛いよなあ・・・ということでした。
浅草の美味しい店に行っても、食材のブランドを前面に掲げている店はあまりないです。掲げている店もありますが、最近の店ですね。
今時は豚のブランドもたくさんありますが、「すぎ田」さんは何も掲示していないです。壁に掲げられているのは「ヒレカツ」「ロースカツ」「エビフライ」といったメニュー名のみ。愛想なく感じる人もいるでしょう。しかし食べれば問答無用で旨い。
私自身も元々は「食べれば旨い」を良しとしていたのですが、2017年の「適サシ肉宣言」ですっかり「つべこべ派」の人間と思われるようになってしまいました。元々は「食べれば旨い派」でしたが、17年当時メデイアの人達が次々にやって来て、あれこれ質問するので、答えていたら情報量が増えてしまったのです。それまでは肉の仕入れ方を掲示したりしていませんでした。
「すぎ田」さんや、浅草の店の美味しさって、表現し辛いです。
いつかAIが普及すれば、美味しさを数値化してくれるかもしれませんけど。

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消費拡大キャンペーン

本日9日から全国料理業生活衛生同業組合の事業として、
「映像コンテンツを使ったSNSの活用による消費拡大キャンペーン」
が始まります。
その映像の中に、「ちんや」も全国のすき焼き店の代表で出ています。映像は公開されますので、良かったら見てやって下さい。
この事業は消費増税対策の事業です。軽減税率の導入で、総菜・弁当が8%なのに対し、料理屋は10%となり、競争上不利な状況になります。
そういう中で、これまで料理屋にあまり親しんでいない人達にPRするには「動画」「Facebook」「YouTube」だということで、動画を製作して、FacebookとYouTubeに上げます。
下記URLでもご覧になれますので、どうぞよろしく。
https://www.ifys.jp/zrr/

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水たき日本一

新宿の「玄海」さんをお訪ねしました。国際観光日本レストラン協会のの、今年の納会でした。
「水たき日本一」で有名な鶏の水たきのお店です。いつもながら絶品でした。
「玄海」さんは九州出身の初代が昭和3年に創業、最初は九州の郷土料理という感覚でしたが、二代目の時に「伊達鶏」へと変更。全国の鶏を調べ、試食し、「伊達鶏」がもっとも玄海に合うという確信を持って採用したそうです。
現在では日本の鶏料理を代表する存在と言って良いと思います。水たきばかりでなく、胸肉の低温調理などにも取り組んでいて、そちらも素材の味わいを堪能できるものでした。
ご馳走様でした。

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お宝食材

「すきや連」でお世話になっている向笠千恵子先生の新著
『ニッポンお宝食材 風土がつくり、人が育てる郷土のお取り寄せ帖』
が出ました。
47都道府県のよく知られた名品から、隠れた絶品まで。「宝」というのは「本気で未来に残していきたい食材」という趣旨で、そういう食材が集められています。
元々はJR東海のPR誌『ひととき』の連載で2013年11月から5年にわたって生産者やその食材を使った料理店を取材したものです。
「すきや連」メンバーも近江牛、千住葱、下仁田コンニャクなど登場しています。
皆様、是非ご購読を。
刊行:小学館
ISBN:9784093887373

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忘年会のテーマ

本日浅草料理飲食業組合の年内最終の役員会があり、続けて早めの忘年会を「ちんや」で開催します。
せっかくの料理屋の集まりですから、テーマを決めて忘年会をします。
本日のテーマは、
ぬる燗ワインと、ヨーグルトすき焼き!
です。
すき焼き好きで、同時にワイン好きでもある皆さんが、すき焼きを召し上がる場合、溶き卵にヨーグルトを入れることを私は、昨年より全力で推奨致しております。
以前でヨーグルトすき焼きについて、「サッパリ」「マイルド」「食べ易い」と言って来ましたが、今回よりは「ヨーグルトすき焼きはワインに合う」です。
ワインに合わせるために、すき焼きという料理を積極的に改変しようと言いだしたわけですから、革新度が進行したわけですね。
振り返りますと、「ちんや」の営業で、卵にヨーグルトを入れ始めたのは、2016年10月8日。
ヨーグルト卵にワインが合うと言い始めたのは、2018年11月3日の弊ブログ。
昨年の今頃ヨーグルト卵にワインの件を確認するため、3人のワイン専門家に「ちんや」に集まっていただきました。ボジョレー・ヌーヴォーの解禁日のことでした。
解禁日にしたのは、もちろん理由があります。「マロラクティック発酵」させたワインがヨーグルトすき焼きに合い、「マロラクティック発酵」させていないボジョレー・ヌーヴォーが、さほど合わない件を体感で確認するためでした。
結果は予想通り・理屈通りでした。
ボジョレー・ヌーヴォーは卵にヨーグルトを入れても入れなくても、ほぼ同じ感じ。しかし、「マロラクティック発酵」させたワインは、明らかにヨーグルト卵に合いました。
1+1が2以上になったので、「マリアージュ」と称して良いと思います。一方のボジョレー・ヌーヴォーは「同居」という感じでしょうか。
ヨーグルト卵と「マロラクティック発酵」させたワインが合う理屈の一つが乳酸である件は2018年11月3日の弊ブログに書きましたので、詳しくはそちらをご覧いただきたいですが、ざっくり書きますと、ワインの樽にいる乳酸菌が、ワインのリンゴ酸を食べて→乳酸と炭酸ガスにします。それが「マロラクティック発酵」でして、これでワインの中に乳酸ができるのです。
ところでワインがすき焼きに合わない、そもそもの理由は、ワインが生卵に合いにくいからでした。
一般に糖質の多い酒は生臭い食材に合い易いです。日本酒が、その典型です。糖質がワインの2~3倍入っているからですね。ワインの中ではシャンパーニュやスパークリングワインに糖質が多いので、普通のワインより合わせ易いです。
で、そういうワインに合わせにくい食材、例えば魚卵を合わせる場合の調理方法は、伝統的にマヨネーズやサワークリーム、ヨーグルトソースなど少し酸味のあるソースで和えること、でした。
そう、ここでヨーグルトが出てくるのです。皆さんもカナッペなどでこれをやった経験がありませんか?
レモンやライムをかける手もありますが、酸の種類が違うので、乳酸であるヨーグルトがベターと思います。
この理屈について私は迂闊にも最近まで気づいておりませんでしたが、今回ハッキリしました。両方の問題の解決策が、たまたまヨーグルトだったという次第です。ラッキーとは、このことですね。
色々申しましたが、以上の二つの理由つまり、
1ヨーグルトの乳酸がワインとの間の「つなぎ」に成ること。
2ヨーグルトの乳酸が生卵の生臭みを抑えること。
によって、ヨーグルト卵のすき焼きはワインに合います。
よって、すき焼き好きで、同時にワイン好きでもある皆さんが、すき焼きを召し上がる場合、溶き卵にヨーグルトを入れることを私は全力で推奨致します。
ワインに合わせるために、日本料理であるすき焼きを改変するという考え方は、なんか、日本を失うようで、批判を招き易いかもしれませんが、実はヨーグルトすき焼きは、日本酒にも今までより合うようになるのです。
日本酒づくりにも乳酸は欠かせないからですが、それまで書くと長くなるので、その件は、2018年11月4日の弊ブログをご覧ください。
さて、忘年会の支度をしなくちゃ。

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おさらい会

向島芸者衆の「向島おさらい会」が約10年ぶりに開催され、拝見してきました。
会場は両国の「江戸東京博物館」の大ホール。この会場を使うのは初の試みだそうで、私も講演会の会場としてしか記憶にありません。
向島芸者衆の「墨堤組合」は東京では一番人数も多く、現在90名ほどが在籍、今回出演する人数も65名と浅草組合と比べると、圧倒的に多いですねえ。
1清元、2長唄、3「お座敷」と演目数も多いのに、その全体を一日に三回繰り返し公演して、同じ演目を毎回違う芸者衆が演じていました。大勢だから出来ることですね。
いつも講演会をしている会場ですから、賑やかさが出るのかな・・・と思いながら行きましたが、道具も必要充分運びこまれて、盛況でした。
関係者の皆さん、お疲れ様でした。

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バージンオイル

私が会長をしている「料飲三田会」の秋例会の講師は、
「オキオリーブ」の創業者で園主の澳敬夫(おき・たかお)さんでした。「美味しいオリーブオイルとは?オキオリーブのこれまでの歩み」と題して講演いただきました。
「オキオリーブ」さんの農園は香川県高松市にあり、100%国産エクストラバージンオイルを作っておられますが、「全量手摘み」「未熟な青い果実を搾る」「収穫後4時間以内に搾る」などの方針で生産し、オリーブオイルの業界で賞をたくさん獲り、国際的に高い評価を得ておられます。
試飲させていただきましたが、深い緑色がまぶしい、濃いオイルでした。
澳さんは1990年経済学部の卒業生で、ベンチャーでオリーブ園を始めた方です。その方の話しを聞きながら私は、何故多くの人がオリーブオイルに魅せられるのだろう?と考えていました。
オリーブオイルを説明する時必ず語られるのは、オレイン酸とポリフェノールが多いということ。どちらもヘルシーな物質として知られていますので、必ず語られますが、聞き飽きた感がありますね。
今回の澳さんの話しで面白かったのは、オリーブオイルは、やろうと思えばご家庭で人力でも獲れますよ!
という点でした。ゼロから始めた生産者さんならではの話しです。
実はオリーブオイルの最大の特徴は、生の果肉を、加熱せずとも果汁を絞って放置しておくだけで、自然に果汁の表面に油が浮かび上がり、これを分離すれば立派なオリーブオイルになるという点です。他の植物油は加熱したり、場合によっては溶剤を使ったりしますが、オリーブオイルはそれが不要です。
そしてオリーブオイルの業界では、製法が原始的であるほど=臼や遠心分離機だけで作ったものを「バージンオイル」として珍重しています。澳さんの農園も「バージンオイル」だけです。
想えばワインも単純な醗酵過程で出来ますが、同じ地中海世界で単純な工程のオリーブオイルが作られ大切にされているのは面白いことだと思います。

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弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.550本目の投稿でした。3.650本まで後100本です。

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HACCP義務化

11月15日は浅草料理飲食業組合の「一斉点検」の日でした。
私も「自治指導員」を拝命しておりますので、近隣の11店舗を回り、衛生管理の状況を拝見させていただきました。
食品衛生の分野では、昨年食品衛生法が改正され、
「原則として全ての食品事業者にHACCPに沿った衛生管理が制度化」されます。
施行は来年の6月1日。
この件を「HACCP義務化」と言っていますが、浅草の飲食店のような小規模店がHACCP認証を取得しないといけないわけではありません。しかし「HACCPに沿った衛生管理」つまりHACCPの考え方に沿って、各店が衛生管理計画を策定し、確実にそれが実施されているか、自主的に目に見える形で点検・記帳しないといけません。
手間が相当増えることは確実なので、組合員の皆さんがスムーズに取り入れらえるよう、説明努力が必要と言えそうです。私も微力ながら努力してまいります。

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弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.549本目の投稿でした。

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食生活文化賞

弊店の和食調理長・吉田が日本食生活文化財団から「食生活文化賞」を頂戴したので、祝賀会に行ってきました。会場は上野の精養軒さんでした。
日本食生活文化財団は、食関連の団体の中では唯一の文化庁所管の団体です。三十数年前、当時は食生活文化について社会全般の認識が深いとはいえず、飲食に関わる人々に対する社会的評価は今日とは比べものにならない程、低いのが実情でした。そんな状況を変えて行こうという趣旨で、この財団は設立され、主な活動内容は、
・「食生活文化賞」の顕彰
・研究会・講演会の開催
などです。
一口に「食」と言っても色々な人達が関わっていますが、志のある方々とお目にかかれるのは嬉しいですね。
今回はお芽出とうございます。

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創立70周年

東京都食品衛生協会が創立70周年を迎え、その芽出たいタイミングで私は、食品衛生功労者・協会会長表彰をいただきました。誠にありがとうございます。恐縮です。
食品衛生協会は、会員店が「自分の店は自分で守ろう」の精神で自主管理体制を作ることを支援する団体です。
資格のある「衛生指導員」が会員店を巡回指導することが活動の中心で、その他に食品検査の実施、衛生情報の配信なども行っています。私も「衛生指導員」の一員として近隣の店舗さんを巡回させていただいています。
表彰、誠にありがとうございました。
HACCP義務化をひかえ、活動に力を入れてまいります。

本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。
弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は3.539本目の投稿でした。

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