なんちゃって和風
年の初めですが、「なんちゃって和風」の店が目につきますね。
だいたい、浅草って「なんちゃって」の店が、日本で一番多い土地なのではないかって私は思うのですが、スカイツリーの御利益で最近さらにますます増えています。
さて、皆さんは浅草の街を歩いていて、「なんちゃって」と本物の区別がつきますか?
区別するのは簡単です。
「なんちゃって」の店は、たいてい半纏が「なんちゃって」だからです。
「なんちゃって」の店の、「なんちゃって」半纏は、デザインこそ尤もらしいですが、素材が遠目に分かる位に残念で、色遣いも違います。
日本の伝統的な染めの風合いは、なかなか化学的に出せないらしく、緑は緑でも、「なんちゃって」の緑は歌舞伎幕の緑には見えず、ジミン党の緑に見えてしまうのです。
そうなってしまう理由は、おそらく「半纏は使い捨て品」と思っているからではないでしょうか。
私達は半纏を使い捨てにしません。ちゃんと寸法を採って、呉服屋さんに注文します。そう、セミ・オーダーなんです。
値段は「なんちゃって」の10倍以上ですが、数年は使いますから、「10倍の非効率さ」とは言えません。その辺りまで分かっていただけないと、「なんちゃって」の皆さんは一生「なんちゃって」のままで終わると思います。
でも今、少し冷静に考えてみましょう。最近浅草に店を出した人に対して、直観的に「なんちゃって」の烙印を押すのは簡単ですし、痛快でもありますが、街の賑わいを創っていくには、そうした新しい方の力が必要です。節度ある物言いをしないといけません。
そして、この話しは、浅草だけの話しに止まりません。
人口減少という現実を前に、日本は「観光立国」を目指すことになっていますが、新しく観光業に参入した皆さんの様子を拝見すれば、正直申して軒並み「なんちゃって和風」ですね。
観光というのは深く文化と結びついていますが、その新規参入会社は、これまで文化とは、とんと関わって来なかったのですから、仕方ないことですね。
いっそのこと思い切って、店の設計を、日本文化に造詣の深い外人設計士にでも頼めば良い位です。
外人設計士は言うでしょう=「日本建築ノ神髄ハまてりあるノ質感ヲ重視スル事デス!コンナ素材ヲ使ッテハだめデス!absolutelyだめデス!予算ヲ増ヤシテ下サイ!!」
日本人オーナーは、気圧されて借金を増額。結果、非「なんちゃって」のクールな和食レストランが、外人さんの手によって作られることになります。そっちの方が結構です、結果的には。
さて、浅草に話しを戻します。スカイツリーで浅草が儲かりそうだ!と進出してきた「なんちゃって」の皆さんが賑やかです。
特にチェーン展開の皆さんは、余所の土地が儲かると思えば、やがてそっちへ移って行くのだと思いますから、私も仲良くする気はサラサラありません。
しかし一方、新しく出来た店の中には、
こだわった商品が置いてあるなあ。個人経営の店なのかな。どんな人がやっているのだろう。ああ、でも、その半纏はみっともなくて勅使できないぞイヤ直視できないぞ!
という店もあります。そういう御店がポツポツと浅草に出来てきています。
そういう方々とは、いつか価値観を共有したい、と私は思います。
「なんちゃって和風」からクールジャパンへ、これは国家の一大課題です。おおげさですが、本当に課題です。
追伸①
藤井恵子さん著の単行本『浅草 老舗旦那のランチ』に登場させていただきました。
不肖・住吉史彦が、「浅草演芸ホール」の席亭さんや、「音のヨーロー堂」の四代目とランチをしながら、浅草について対談する、という趣向です。
他にも20人ほどの、浅草の旦那さんたちがリレー対談で形式で登場します。
是非ご購読を! 平成24年6月3日、小学館発行。
ご購入はこちらです。 (できればレビューも書いて下さいね!)
追伸②
「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。
この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。
その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。
現在の笑顔数は334人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。
皆様も、是非御参加下さい!
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.048日連続更新を達成しました。毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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