不人気な総理
独特の時代小説が人気の河治和香先生が、浅草を舞台にした小説を御執筆中なのだそうで、このところリサーチの為頻繁に浅草に見えています。
その一環で先生と「駒形どぜう」の大旦那さんの対談があり、それが「Jノベル」という文芸雑誌に掲載されましたので、私も拝読しました。
拝読しまして、
「どぜう」は元々「どぢやう」と表記していたのに、ある時火事に遭ってしまい、それで縁起の悪い4文字を3文字に改めたとか、
文豪・久保田万太郎と「駒形」の当時の御主人の間には深い交流があって、万太郎はドジョウが食べられないのに、店に足繁く通って来た、
とかいう辺りの話しは有名な話しなので、私は以前にも聞いたことがありました。
今回の対談で「へええ」と思ったのは、
佐藤栄作総理が来店された時のエピソードです。
佐藤総理は戦後最長の政権を率いた総理です。在任中日本経済が順調に成長し、また自民党内の人事を掌握することに成功して政権は長続きしましたが、末期には疑獄事件などで人気が落ちていました。その頃に「駒形」さんに来店されたそうです。
不人気な総理なので、警察もピリピリしていて、事前に避難経路などを入念に調査していったそうです。
店の側としても心配になり、通用口から入店してくれれば良いのに!と思っていたところ、いざ当日、総理は堂々と正面から入って来たそうです。
「駒形」さんの正面入口を入ると、そこには板の間の、入れ込み形式の客席が広がっていて、何十人もの男女が食事をしています。つまり正面から入る、ということはその人々の横を通りぬけないと奥の個室に行けない構造なのです。
その大勢の客の中に、アンチ与党の人間がいることを店側も警察も心配したわけですが、しかし総理は堂々正面から、だったそうです。
ついに総理が御入店。不測の事態を警戒して御主人も警察も身構えましたが、客の反応は、なんと、万歳三唱。
総理は万歳!の声に迎えられ、店を去る時も拍手で送り出されたそうです。
庶民が素朴に政治家を尊敬していた時代、そんな時代が、そう言えばあったよね、この記事を読んで思い出しました。
さて時代は下って、現職のノダ総理は自称「ドジョウ総理」ですが、もし「駒形」の御店を訪れたとしたら、万歳の声に迎えられるでしょうか?
ドジョウらしく、通用口から搬入されることをお勧め致します。
追伸①
藤井恵子さん著の単行本『浅草 老舗旦那のランチ』に登場させていただきました。
不肖・住吉史彦が、「浅草演芸ホール」の席亭さんや、「音のヨーロー堂」の四代目とランチをしながら、浅草について対談する、という趣向です。
他にも20人ほどの、浅草の旦那さんたちがリレー対談で形式で登場します。
是非ご購読を! 平成24年6月3日、小学館発行。
ご購入はこちらです。 (できればレビューも書いて下さいね!)
追伸②
「日本国復興元年~1千人の笑顔計画」を実行中です。
この「計画」では、まず「ちんや」で東北・北関東の牛を食べていただきます。そして食後の飛びっきりの笑顔を撮影させていただきます。
その笑顔画像をこちらのサイトにUPして、北の産地の方に見ていただきます。
現在の笑顔数は300人です。笑顔数が1千人に達するまで継続してまいります。
皆様も、是非御参加下さい!
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて942日連続更新を達成しました。毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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