赤シャリ
料理屋が他の料理屋を紹介し、それが連鎖して行くという趣向の番組がありましたので、
築地場外にある「つきぢ神楽寿司」さんをご紹介しました。
「神楽寿司」さんは珍しい「赤シャリ」を使っている店として知られています。
「赤シャリ」とは赤酢を使った酢飯のことで、鮮明な赤というよりは褐色に近い渋い色です。江戸時代から昭和戦後すぐまで使われていましたが、現代ではあまり使われない伝統的技法です。「神楽寿司」さん自体は老舗というわけではないのですが、伝統的技法の旨味を体験することができます。
で、なぜ、赤酢が赤いのかですが、それが酢の原料が酒粕だからです。
普通の酢は日本酒が原料で、そこに酢酸菌を入れます。酢酸菌がアルコールを食べて酢酸を作るので酢になります。元が日本酒ですから色は透明です。
一方赤酢は原料が酒粕なので、色が付きます。そして色だけでなく、酒粕に含まれていたアミノ酸などの成分も継承するので旨味があります。
普通の酢を使って酢飯を造る場合、味のバランスをとるために砂糖を入れますが、赤酢の場合は旨味が備わっているので、砂糖を入れずに塩のみ。それでネタとバランスすることができます。
肉の旨味の重要視している店の者としては、シャリの旨さを大切にしているお店を紹介しようと思った次第です。
ついでに申しますと、赤酢が19世紀前半に登場したことが、寿司の普及に大いに貢献しました。
いったん日本酒を造り、そこから酢を造るという工程は人手も時間もかかったので、酢は当時安いものではありませんでした。その酢を酒粕から造ってしまうことができて、しかも味の面でも美味しいとなったわけですから、一石二鳥です。寿司が手軽になって普及した理由の一つがここにあります。
その赤酢が昭和戦後に何故廃れたかですが、見た目がショボかったからです。
戦中・戦後にひもじい想いをした日本人は白飯を渇望していて、その反動で褐色の赤シャリは品質の悪い物のように見えたようです。
そこからだいぶ時間も経ちましたし、赤シャリが見直されて良い時期かと思います。
本日もご愛読賜り、誠に在り難うございました。 弊ブログは2010年3月1日に連載スタートし、本日は4.055本目の投稿でした。
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