師走蠅ふたたび
今年もまた、この件を書かずにおられません。師走に入り、「ふるさと納税」サイトの広告が、テレビやネットで五月蠅いですねえ。
師走蠅と書いて、フルサトノウゼイと読ませたら良いと思います。
来年から、この制度に規制がかかるとかで、今年は「駆け込み」の様相です。
さて弊ブログの読者さんは、私が「ふるさと納税」を嫌いなことを、既にご存知と思います。
何の所縁も無い土地の産物を買うためだけに自治体に寄付をする行為を「ふるさとの納税」とか称するらしいですが、これは納税の仕組みを利用した安売りに過ぎず、それに「ふるさと」という言葉を充てるのは、素晴らしいこの言葉の尊厳を傷つけていると私は感じています。
それで「ふるさと納税」という言葉に私はいちいち「 」を付けています。自称イスラム国を「イスラム国」と書くようなものです。
「ふるさと納税」の人気アイテムの上位は肉ですが、その肉の味の面でも、「ふるさと納税」は期待できないと私は思っています。
一般論ですが、肉の味にこだわっている流通業者さん(問屋さん)が地方には少ないからです。勿論、一般論ですけどね。
私が創った「肉の熟成クイズ」を解いてみた方は、そこに書かれている仕事の相当部分が、肉の問屋さんの倉庫で行われていることに気づかれたと思います。
牛さんを屠殺すれば、即、肉に成るわけではありません。少なくとも美味しい肉には成りません。
美味しい肉に成らせたければ、そのように取り扱わねばならないのですが、その仕事は面倒です。肉をスピーデイーに流通させたいのに、それを停滞させてしまう形になりましょう。
よって、肉の美味しさにこだわれば作業場からは嫌われます。そんな中で強い意志を持って、流通の現場をコントロールしなかれば行けないのですが、それがお出来になる方が地方には少ないと私は観ています、しつこいですが、もちろん一般論です。
その点、東京や京都であれば、味に五月蠅い料理屋や肉屋がおりますから、その連中が始終、問屋さんにもろもろのリクエストを出します。それが味の向上につながるのです。
例えば、私自身は、問屋さん達と必ず月に一回会食しています。
「会食」と申しましても、すきやきを一緒に食べて感想を言い合うだけですが、そういうことをしている理由は勿論、同じ肉を食べた時に、違う感想を持つようでは困るからです。
そういうことが地方の問屋さんとではやりづらいですよね、残念ながら。毎月上京して、私に会いに来るファイトがおありの方なら、お目にかかってみたいところですが、現実的ではないでしょう。
ここまでお読みになって、分かっていただいたと思いますが、「ふるさと納税」つまり産直システムで買うということは、そういう信頼関係がない先から闇雲に買うということになるわけです。
貴女が、有名ブランド肉を買ったのに美味しくない!という経験をなさったなら、その理由はおそらく、こういうことだったろうと想像します。ご愁傷様でした。
もちろん例外も在ります。米沢市では「米沢牛のれん会」の会員店さんが、市の委託を請けて、「ふるさと納税」の返礼肉を担当しておられますから、現在は美味しいのですが、独占を続けていると、他から妬まれる心配があります。妬みの声に市役所が耳を傾ければ、現在は美味しい米沢牛も安泰とは言えなくなってくると私は観ています。
このように味の面でも、私は「ふるさと納税」というものを高く評価しておりません。
まったく今日も広告が師走蠅いなあ。
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