遺伝的多様性
和牛の「遺伝的多様性」を問題にする記事が出ました。
朝日新聞の12月20日の夕刊に載った、
「(あのとき・それから)1944年 和牛の誕生 サシ重視、偏る種牛に危機感も」
という記事です。
和牛は交配に交配、選抜に選抜を重ねていますので、今はごく一部の経済性が高い血統だけが残っています。「スーパー種牛」とか言われる血統の子孫だけが残って、育てられているのです。それで、
「共通の祖先を持つ種雄牛に利用が集中し、遺伝的多様性が失われつつあるのが問題になっています」(家畜改良センター・浅田正嗣係長)
この件が専門誌ではなく、一般の新聞に載ったことは画期的と私は思います。
どの位集中しているかと申しますと、
2012年の全国和牛登録協会の調査では、黒毛和牛の繁殖雌の99.9%以上が但馬牛「田尻」号(1939年-54年)の子孫だったそうです。
ほとんど全員が源氏か藤原氏だった、お公家さんの世界のようです。
この選抜の結果、A5等級の出現率は俄然、高まりました。そして、そのA5の脂が美味しくなくなりました。
これが「適サシ宣言」の背景です。
正確に申しますと、美味しくない脂が増えたのは、単に血統選抜だけではなく、肥育の短期化の傾向も大きいと私は思っていますが、そこは弊ブログの読者さんは先刻ご存知ですから、今日は触れません。
この記事のまとめコメントは、私の考えと完全に合致します。
東北大学大学院の鈴木啓一教授(動物遺伝育種学)は、こう言っておられます、
「脂肪交雑を増やせばいいという今の路線は変更が必要かもしれない。」
「かもしれない」どころじゃないと思いますよ、教授。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.860連続更新を達成しました。すき焼き「ちんや」六代目の住吉史彦でした。
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