すき焼きは、生卵を最も美味しく食べる食べ方だ!
先日もテレビの収録で、すき焼きの溶き卵の件が話題になりました。
ネタバレに成るので詳細は書けませんが、その出演者の方は、
すき焼きは、生卵を最も美味しく食べる食べ方だ!
というお考えでしたので、当然卵のことが気になるようでした。そのご質問は・・・
すき焼きの卵って、いつから誰が付けるようにしたんですか? どうして付いているんですか?
これは、すき焼き界第一級の謎だと思います。
卵を付けた「元祖」は分かっていません。
分かっていないので、私なりの推測をご説明申し上げました。弊ブログの2015年12月10日号(「大人のすき焼き教科書」)に書いた説明と同じですが、ここにも再掲します。
さて両国の享保年間ご創業の「ももんじや」さんに行って、猪鍋を頼むと卵は付いて来ませんし、浅草の「駒形どぜう」さんでも「どぜう飯田屋」さんでも鍋に卵は付きませんから、江戸時代の鍋には卵は付いていなかったのだろうと思われます。
明治時代のある日、牛鍋に卵が付いたのです。しかしそのことをハッキリさせるような文献には行き当たりません。謎は深まるばかり。
文献的なことが分からないので、少し違う角度から見てみましょう。
そもそも卵は何の為にあるのでしょう。卵が付いている目的は、
・温度を下げるため
・味をマイルドにするため
ですが、温度を下げるだけなら他の物でもよいわけで、やはりすき焼きの甘辛い味をマイルドにするのが目的と思われます。
次に栄養面も考えてみましょう。
栄養面では肉に卵を合わせる必要性は無いと言えます。卵のアミノ酸スコアは100点で、卵を食べれば、それだけで必須アミノ酸を全て摂取できますが、実は牛肉も100点でして、肉だけ食べても必須アミノ酸を全て摂取できます。
100点に100点を加える意味は無いですね。
しかしです、私が思いまするに、この意味が無いところに意味が在るような気がします。つまりこれは贅沢行為なんです。
明治時代、牛肉は貴重でしたが、卵も貴重でした。その貴重なものをダブルで食べることに人々は興奮したのではないでしょうか。
しかも卵に肉を浸せば温度を下げることが出来て、味もマイルドに成って、良いこと尽くめです。
文明を開化させ、産業を殖え興そうとしていた当時の人々にパワーを付けるための料理には、その位の勢いが欲しかったのでは・・・と考えたりします。
江戸の鍋料理には卵が付かなかったのに、明治の鍋料理に卵が付きました。
付けたのは、どこかの特定の個人というよりは、時代の気運あるいは「時勢」だったのではないか、私はそう考えることにしています。(尾張。いや、終わり。)
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.833日連続更新を達成しました。 すき焼き「ちんや」六代目の住吉史彦でした。
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