気分の問題

<ネットで見つけた、とある肉屋さんのボヤキです>

明けましておめでとうございます。

旧年中は、公私ともに大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願いします。

さて、なぜか今年に限ってお肉の変色や匂いに関する、はなからクレームの様な問い合わせが増えました。皆さん普段どんなお肉を食べてらっしゃるんでしょうか。

変色しない、匂い(香り)もない若齢の牛の肉を食べてるんでしょうね。

切り立ての肉、しばらく時間を置いた肉、包んで重なった部分や包装当りの部分、色は変わりますよ!匂いもしますよ!

肉に対するおかしな知識が広まってるのか、知らなさすぎるのか。手元に届いて、包装したままご自宅の冷蔵庫で23日経ったお肉が食べれるかどうかは、自分で判断して下さい。ナマモノですから!!

熟成肉ありますか?なんて聞かれると、全部熟成です!と答えます。そもそも熟成してない様な肉は普通、販売してませんから・・・

こちらの肉屋さんは「ちんや」と似た仕入れ方針を採っているお店さんですが、さて、これに対する私のコメントは、

「この投稿にコメント殺到してますね(笑い) ウチにも、ほぼ同じ趣旨の電話が大晦日に1件ありました。おそらくスーパーの肉しか知らない人が、年末年始だけ我々の所に来るのでしょう。年末年始はデンジャラスとみなして防御線を張るしかないと思います。嘆かわしいですけどね。」

この件を解説いたしますと、そもそも熟成させた肉は、生鮮食品ではありませんから、濃い色をしています。一方スーパーの肉は、屠畜後数日で販売してしまうので、浅い色をしています。

それ以前に、若齢の牛は色が浅いですが、しっかり肥育すると色が濃くなります。しっかり肥育した牛を熟成させれば、ダブルで濃くなります。

綺麗な色がお好きな方は、スーパーでお求めになれば結構毛だらけなのですが、熟成させていませんから、旨くないですよ。それに若齢だと脂肪の融点が高いからモタレますよ。

この傾向は、牛の性別で違いがあります、メス牛の方が濃い色になるのです。理由は分かりません。

「メス牛の方が濃い色」というよりは、熟成を重視する肉屋さんがメス牛を好む傾向にあるので、結果的にメス牛の方が色が濃いように感じているような気がします。今時のオス牛は肥育月齢の短い牛が多く、熟成させ甲斐がないので、熟成を重視する肉屋さんは仕入れず、メスを熟成させるのだと思います。

それから、肉の部位でも違いがあります。モモなどと保水率の高い部分が、濃い色になる傾向があります。

そうした部位が折り重なると、空気に触れないわけですから、濃い色です。それが不潔だ!と言われてしまうのですが、食べても問題ないです。気分の問題です。

さて、この程度のことで文句をたれている方には、我が福澤先生の『肉食之説』(明治3年)を捧げたいと存じます。(原文のママだと読みにくいので、少し読みくだして引用しますと)

「よく事物の始末を詮索すれば世の食物に穢き物こそ多からん。」(中略)

「或は牛肉牛乳に臭気あるといはん乎。松魚の塩辛くさからざるにあらず、くさやの干物最も甚し。先祖伝来の糠味噌樽へ むかでうじと一処にかきまぜたる茄子大根の新漬は如何。」

「皆是人の耳目鼻口に慣るると慣れざるとに由て然るのみ。慣れたる物を善といひ、慣れざる物を悪しといふ。自分勝手の手前味噌だになめる其口へ、肉の「ソップ」が通らぬとは、あまり不通の論ならずや。」

そういう不通の論者は、

「必ず身心虚弱に陥り、不意の病に罹りて倒れるか、又は短命ならざるも生きて甲斐なき病身にて、生涯の楽なかるべし。」

流石は先生、この「言い切り感」が私は好きです。

この文では肉食を勧めるために、伝統的醗酵食品と比較しているのですが、私は、現代の濃い色の肉に慣れていない人にも、このセリフを申し上げたいと思います。

肉の色なんかでビクビクしていると、生涯の楽なかるべし、ですぞ。

 

追伸①

CSフジテレビONEの

『寺門ジモンの肉専門チャンネル』に出演させていただきます。

芸能界一肉に詳しい男」寺門ジモンさんが送る肉料理に特化した待望の肉専門番組が、これです。出られて光栄です。

放送は、1/21(土) 9:00~9:30    です。

追伸②

今年も「ミシュランガイド東京2017」に載せていただきました。 3年連続掲載です。ありがとうございます。

追伸③

拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』

浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。

四六判240頁

価格:本体1600円+税

978-4-7949-6920-0 C0095

2016年2月25日発売

株式会社晶文社 刊行

 

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.518日連続更新を達成しました。

 

 

Filed under: すき焼きフル・トーク,ぼやき部屋 — F.Sumiyoshi 12:00 AM
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