キリンビール高知支店の奇跡

遅ればせながら読みました、

『キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え!』。だいぶ売れているようです。

弊店はアサヒさんの地元ですが、国産4社全部扱っておりまして、キリンも置いておりますのでね。

さて、この御本は、アサヒ「スーパードライ」の攻勢の前に負け続けていた頃のキリンの社内で奮闘し、副社長にまで昇りつめ、ついにはシェア1位をアサヒから奪還したという田村潤さんの体験記です。

筆者が行ってきた改革の例をあげますと、

1.会議を廃止

2.内勤の女性社員を営業に回す

3.本社から下りてくる施策を無視

4.高知限定広告を打つ

5.「ラガーの味を元に戻すべき」と本社に進言

などがありました。

業績を上げるためにとにかく排除すべきなのは官僚主義・形式主義で、

3.本社から下りてくる施策を無視

というのは、その為です。本社の施策をこなしていれば、それで給料が貰えるという考え方がとにかくダメなのであって、「何のために働くのか」「自分の会社の存在意義は何なのか」という「理念」を自分で考え抜くことが、すべての大元となると著者は訴えます。

田村支店長の下で「何のために働くのか」=「高知県内でキリンを一番目立たせる」に目覚めたキリン高知支店の営業マンは、以前は月に30軒ほどしか営業回りをしていなかったのが、月300軒に増えたのだそうです。お疲れ様でした。

この成功を皮切りに、著者が四国地区本部長、東海地区本部長、本社営業本部長へと昇進して過程が、リアルに描かれていて、サクサク読める本です。

本社施策を無視して来た人が本社営業本部長というのだから面白いです。

一方、食べ物に関わる者としては、かなり残念なことも載っていました。

それは「ビールは情報で飲まれている」ということです。逆に言えば味では飲まれていない

田村さんが支店長として高知の人々にさんざん聞きまわった結果、

「ほとんどのお客様はビールの味にはそれほど差がないと思っている」

それで、

「美味しそう」

「元気がいい」

「売れている」

という情報で飲むことになります。

そして、その情報の根拠ですが、「目立つ場所にたくさん置いてあるのが売れていて美味しいビール」。当時の「スーパードライ」がまさにそれに当たります。

結局それで、営業マンが奔走してスーパーの棚を他社からブン取る必要があるのです。

うーん。

もちろん、この理論には、ビールは大衆消費財だから、という前提が付いています。大衆すなわち、味のことは良く分からないし、分かろうとも思っていない人々にも売って行くのだから、そういう結果になることもありえる、というわけです。とほほ。

私のような、月300軒も外回りしたくない人間は、寡占的な大衆消費財の市場では、きっと負け犬になるのでしょうね。

読了して、美味しい肉だけを売って行こうとあらためて私は決意したのでした。

追伸①

CSフジテレビONEの

『寺門ジモンの肉専門チャンネル』に出演させていただきます。

芸能界一肉に詳しい男」寺門ジモンさんが送る肉料理に特化した待望の肉専門番組が、これです。出られて光栄です。

放送は、11/20(日) 10:00~10:30、

11/26(土) 15:50~16:20です。

追伸②

拙著は好評(?)販売中です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。

題名:『浅草はなぜ日本一の繁華街なのか』

浅草の九人の旦那衆と私が、九軒のバーで語り合った対談集でして、「浅草ならではの商人論」を目指しています。

東京23区の、全ての区立図書館に収蔵されています。

四六判240頁

価格:本体1600円+税

978-4-7949-6920-0 C0095

2016年2月25日発売

株式会社晶文社 刊行

 

本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.455連続更新を達成しました。

 

Filed under: 色んな食べ物 — F.Sumiyoshi 12:00 AM
トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:

コメントはまだありません »

No comments yet.

Leave a comment





(一部のHTMLタグを使うことができます。)
<a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <s> <strike> <strong> <img localsrc="" alt="">