オリオンの星座
宮本孝太郎さんの遺詠集『オリオンの星座』を読んでいます。
宮本孝太郎さんは昭和8年から平成元年まで、神輿と太鼓の「宮本卯之助商店」に在職し、副社長として六代卯之助さん(先代)を助けた方です。
本は、当代(七代目)卯之助さんからお借りしました。
戦災で東京の神輿がほとんど焼けてしまい、それを再建するのに大忙しだった戦後、
やがてモータリゼーションで世の中の雰囲気が一変して、神輿なんか要らない!と言われてしまった高度成長時代、
そして平成まで。
孝太郎さんは、戦後の、日本の祭礼を支えた重要なお一人だと思います。
それにしても、この本の最後についている、この方の戦歴がスゴいです。
ノモンハン事件に参加して生き残り、
それだけでも大変なことなのに、いったん帰国して再度千島に出征し、敗戦後はソ連によって抑留されていたというから驚きます。
ノモンハン事件(1939年)は「事件」と言われているので、過少評価されがちですが、「事件」と言われるのは宣戦布告をしていないというのが理由で、実質は日ソ間の本格的な戦争です。
政治と謀略が大好きだった日本の関東軍は、当時ソ連軍の実力をなめてかかっていました。それで開戦。非道なことに、途中で相手が重火力を持っていると気づいた後でも、参謀たちは兵に無理な突撃を命じ続け、結局惨憺たる敗北を喫します。
この敗北を教訓にすれば、その後の日本の在り方も変わったと思われるのですが、最悪なことに軍はこの件を秘匿し、さらに愚かな戦争へと進んで行きます。
孝太郎さんは、その戦いの生き残りなのです。題の『オリオンの星座』の「オリオン」は、夜間ソ連軍の目を盗んで撤退する時に夜空のオリオン座を目印にしたことに因んでいるそうです。
戦地で鍛えられたからか、孝太郎さんは会社で問題が起きてもまったく揺るがない、「信念の人」だったと七代目は語っておられました。
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