和食と和牛
和牛の相場が高いです。
大震災の後に農場を維持できなくなった生産者の方が少なくなく、またTPPで将来を悲観して転業する方も少なくないので、そういう事態に成っているようです。
で、和牛専門の業者さんは皆ヒーヒー。
一方和牛に拘りの無い業者さんはアッサリ海外産にシフトしているようです。タスマニアとかね。
弊店は勿論ヒーヒーの組です。
しかし、ヒーヒーばかり言っているのでは仕方がないです。高い物になってしまっている和牛の良い点をPRしないといけません。それが当面の課題です。
さて、和牛を考えるに当たっては、まずは和牛肉が食されて来た環境を考えてみましょう。
「食されて来た環境」とは「和食」という食文化です。和食には次↓のような特徴がありました。
・通常は牛肉を食べることを避け、滋養強壮の為ときおり「薬」として肉を食う。
所謂「薬喰い」ですね。
江戸時代には彦根藩の味噌漬けが将軍家へも献上されていました、お薬としてです。
明治三年に福沢諭吉先生が『肉食之説』を唱えた時も滋養強壮が主眼でした。
「肉類のみを喰ひ或は五穀草木のみを喰ふときは必ず身心虚弱に陷り、不意の病に罹て斃るゝ歟、又は短命ならざるも生て甲斐なき病身にて、生涯の樂なかるべし」さらには肉食を避ける人達の論は「人の天性を知らず人身の窮理を辨へざる無學文盲の空論なり」とまで言っています。
では、体が弱った人が食べ易い肉とは、どのような肉でしょうか?
私は、脂肪の融点が低い肉が食べ易い肉だと考えます。逆に融点の高い=融けずに固形のままの脂は消化しにくいのです。
そもそも脂肪というものは、胆汁で乳化され、次いで膵臓からのリパーゼで分解されて、腸管から吸収されますが、食後3~4時間してやっと吸収される位消化しにくいものです。このプロセスでとりわけ固体の脂肪が消化されにくいのは当然のことです。「かたい脂は胃もたれする」と言われるのは、これです。
その「かたい脂」が和牛には少ないのです。ここも和牛の一大特長です。世界的に比較して、和牛の脂の融点は低いのです。
牛の脂の融点を「40℃~50℃」などと表示している本があったりしますが、私が店で仕入れている和牛の脂は25℃位の室温でも融け始めます。かたくない脂=不飽和脂肪酸を多く含んでいるからです。こういう脂なら、病身の人やお年寄りでも食べられるのです。
ですので現代においても、年配の方には和牛がお勧めと成ります。
さてさて、そのかたくない脂=不飽和脂肪酸を多く含んでいる肉は、普通の人にとっても食べ易い肉です。
とりわけ、箸で肉を生食する場合に、かたくない脂=不飽和脂肪酸を多く含んでいる肉は食べ易いです。
と、いうわけで「箸で肉を生食する」という、もう一つの和食の特長にも、この話しは関係して行くのですが、そこまで書くと長すぎるので、今日はこの位に致します。
ご機嫌よう。
追伸、
すき焼き思い出ストーリーの投稿を募集しています。
すき焼きは文明開化の昔から、日本人の思い出の中に生きてきた料理です。でも残念ながら、その思い出話しをまとめて保存したことはなかったように思います。
ご投稿くださったものは、「ちんや」創業135周年を記念して本に纏め、今後店の歴史の資料として、すき焼き文化の資料として、末永く保存させていただきます。
どうぞ、世界に一つだけの、すき焼きストーリーを是非、私に教えて下さい。
投稿〆切は9月末日です。
既にご応募いただいた、50本のストーリーはこちらです。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて2.005日連続更新を達成しました。
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