同じ味①
雑誌やテレビの取材を受けてウンザリすることあります。
彼らは笑顔で、こう↓言って来ます。
御店の味は明治時代と変わらないんですよね?!
戦争中に、ご先祖様がタレの甕を持って逃げたとか、そういう面白いエピソードはありませんか?!
彼らは「老舗」と言われる店に行く時は、どの店に行っても、この問答で全て済ませているのです。楽なもんです。
いやいや、いやいや、あのですね、
すき焼きは現代が一番旨いんですよ!
何故ならですね、少し長くなりますが、丁寧に説明しますとですね、
牛の脂には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類がありまして、一方は美味くてもう一方は旨くないんですが、
その違いは分子の結合の仕方の違いでして・・・
と、こちらの話しは未だ序の口なのですが、ADさんの顔から一気に生気が消え失せて、どんよりした顔に成っています。
味は明治時代と変わらない、そう言って欲しいのは知っています。それなら編集が簡単ですからね。私も協力したくないわけではないんです。
実際、私も自分に自信のない時代は、味は変わらないんですよね?!
と聞かれて「は・・い・・」と答えていました。
結果、「ガンコに変えない若旦那」などというコピーの横に、私のひきつった笑顔が掲載されたりしました。
しかしですね、技術も世相も違うのに、味が同じなわけはなく、すき焼きが一番旨いのは現代です。本当です。
その理由を、ADちゃんは聞くのをメンド臭がりますし、私も彼らと話すのがウンザリなのですが、弊ブログの読者さんは多少長い説明でも読んでいただけると存じますので、今日は、この際、説明してみようかと思います。
さて、すき焼きが一番旨いのが現代である理由は、遺伝子レベルで牛を把握しているからです。
なんの遺伝子かと申しますと、例えば、脂肪に関わる遺伝子です。
牛の脂には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があるというのは、さっき話しましたが、牛肉の風味や食感は、この内の不飽和脂肪酸の含有量が多いほど良いことが知られています。
オレイン酸に代表される不飽和脂肪酸は融点が低くて良く融(と)ける為、胃モタレすることがなく、またその融けた脂に味や旨み成分が溶(と)け込むので、食べた時に全体の味がマイルドになります。
「ちんや」さんの脂は甘いねえ、と良く言われるのは、これです。
ここまでダイジョーブですか?
次行きますよ・・・
・・・どうも、この話しはやはり長いので、二日に分けますね。続きは明日の弊ブログにて。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.713日連続更新を達成しました。
毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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