食の街道を行く
『すき焼き通』の著者で、「すきや連」活動でもお世話になっている、向笠千恵子先生が新刊を出されました。
『食の街道を行く』という御本です。(平凡社新書)
先生は長い間、食の分野で仕事をなさってきた、第一人者ですが、それでも、巻頭言の中で、
「この手の取材は対象がピンポイントになりがちである。」と言っておいでです。
そこで、今回の御本を書くにあたって、先生は視点を少し修整し、以下引用ですが、
点を追うばかりでなく、食の流れを線や面としてとらえられないだろうか。
考えた末に、食べものの名がついた街道に目を向けた。鯖街道、ぶり街道、鮎鮨街道と、魚の名を冠にした道だけでもいくつもある。
もし、それらの「食の街道」を俯瞰できれば、食の流れを空間的にも時間的にもトータルに把握できるに違いない。
始点と終点の食、そして宿場ごとの食もわかるし、その食品の歴史までも見えてくるはずである。(引用終わり)
そういう視点で、日本に数ある「食の街道」を訪ね、食の流通・交流に関連する道を辿り、日本の食文化の原点を探る、という大変意欲的な挑戦をなさったのが、この御本です。
ご本人が、集大成的な本、とおっしゃるだけあって、傑作です。
紙面の裏に、永年の、ピンポイントでない、取材活動が透けて見え、説得力が違います。そして、そうした取材で得た知識と、食にまつわる伝承とが、文中で見事につながっていく辺り、快作です。
食に関心のある、全ての皆様の、参考になる名作と思います。
さらに、嬉しかったのは、この御本に浅草も登場することです。川越から江戸へ水運で続いていた、「さつま芋の道」の終着が、浅草のすぐ近くの、花川戸、駒形、蔵前なのです。
私も、浅草近辺に芋問屋さんが多いことは、もちろん知っていましたが、「さつま芋の道」というほど盛んな往来だったとは、不勉強で知りませんでした。
現代の、芋問屋さんの代表として登場する、「川小商店」さんの「川」が、川越の「川」であることも、存じませんでした。「川小」のS社長とは旧知で、よくお目にかかるのに存じませんでした。
S社長とは、浅草の大先輩で、この御本の259ページに、「浅草を代表する旦那衆の一人」「歌舞伎役者顔の好男子」と称賛されている方のことです。
うーん、「旦那衆の代表」は、まあ良いとして、「歌舞伎役者顔の好男子」と言えば、むしろピッタリなのは、すき焼き屋「CH」のS社長だろうな。今度向笠先生にお目にかかったら訂正しておこう、うん。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
*『食の街道を行く』のご購入は、こちら(平凡社のサイト)です。
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