日本酒の日、コーヒーの日
日本酒VSコーヒーの紙上対決は、パッと見ではコーヒーの勝利に終わったようでした。
毎年10月1日は、「日本酒の日」でもあり「コーヒーの日」でもあるので、両者が新聞広告を出したのですが、少なくとも読売新聞ではコーヒーの圧勝でした。
日本酒のスペースは紙面の下六分の一。地味にその日が「日本酒の日」であることを伝えていましたが、コーヒーは全面×2ページ。
コーヒーが好きだったという、故・松田優作さんの大きい写真で読者の目を引いて、プレゼント企画も付いていました。コーヒーの圧勝でした。
時に、なんで10月1日は「日本酒の日」でもあって「コーヒーの日」でもあるんですかねえ?
全日本コーヒー協会によりますと・・・
「国際協定によって、コーヒーの新年度が始まるのが10月で、この日がコーヒーの年度始めとなります。さらに、日本では、秋冬期にコーヒーの需要が高くなることから、1983年に、全日本コーヒー協会によって、10月1日が「コーヒーの日」と定められました。」
・・・だそうで、今市、目出度い感じはないですね。
対する日本酒造組合中央会の説明は、やや長いです。
「通常日本酒づくりは、晩秋から厳冬、早春にかけて仕込みが行われ、並行複発酵(糖化とアルコール発酵が同時に進行する発酵技術で、世界の発酵法の中でもっとも高度な技術といわれている)という日本酒固有の醸造法によって、新酒が誕生します。さらに新酒を火入れ(低温殺菌)して貯蔵タンクに囲い、涼しい酒蔵の中で夏を越させます。酒蔵で静かに息づいている酒は、ゆっくりと熟成して秋口には、香り、味とともに芳醇な酒となります。」
「このように日本酒は、冬から春、夏から秋へと日本の四季の移ろいとともに生まれ育つ酒で、日本独特の気候風土が生み出した酒です。豊かな自然の恵みと日本人の知恵の結晶が日本酒であると言えます。わけても、10月は全国各地に海の幸、山の幸があふれ、日本酒が本当においしくなる月です。」
「日本の文化遺産ともいえるこの日本酒を正しく引き継ぎ、後世に伝えるという想いを新たにするとともに、一層の愛情とご理解を、という願いをこめて、日本酒業界では、1978年(昭和53年)に「10月1日は日本酒の日」と定めました。」
まとめますと、日本酒は伝統的に「寒造り」で寒い時期に酒を造り、それをすぐ飲まずに夏の間寝かせておいて、涼しくなったら売り始める、そのサイクル(=「酒造年度」)の初日が10月1日だから「日本酒の日」の日なのです。
業界では涼しくなったら売り始めることを「ひやおろし」と言います。
「日本酒の日」を盛り上げたかったら、「ひやおろし」の解禁日を10月1日にして、絶対フライングを許さない体制を築けば良いと思うのですが、難しいんですかねえ。
ボジョレーに出来て、日本に出来ない理由が分かりませんが、まあ、現実は出来ていないわけで、一般人にとっては特段盛り上がらない「日本酒の日」と「コーヒーの日」が毎年やってきます。
あ、実は私も「〇〇の日」を制定したことがあります。
10月15日の、「すき焼き通の日」です。日本記念日協会に登録してあります。
これはね、根拠が在るんですよ。
2008年10月15日に、すき焼きに関する本『すき焼き通』が刊行されたのです。平凡社新書で、著者は向笠千恵子先生です。
これをきっかけに、すき焼き店とすき焼き愛好者による「すきや連」が誕生しました。だから「すき焼き通の日」なんです。
「すき焼きの日」にしなかったところが奥ゆかしいでしょう。僕ちゃん。
是非、お祝いして下さいね、10月15日。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.678日連続更新を達成しました。
毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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