猪吊れば
読売新聞都内版に連載されている「波郷再訪」というコーナーを興味深く読んでいます。
「波郷」とは勿論「昭和の俳聖」石田波郷(はきょう)のことで、その波郷が1957年から読売新聞に連載した『江東歳時記』の故地を、現代の記者さんが再訪する、というのが、この企画です。
さて旧臘のことですが、この企画の33回目として、両国橋畔の「ももんじや」さんが出ていました。
「ももんじや(百獣屋)」とは、猪・熊などの獣肉の鍋料理を出した店のことで、これこそ牛鍋の前身です。
御一新まで江戸市中に200軒~300軒在ったと言われていますが、現在まで「ももんじや」と名乗っているのは、両国のこの1軒だけです。
私は「ちんや」従業員の全員研修で、ここをお訪ねしたことがあります。
その「ももんじや」さんも太平洋戦争の空襲で被災。八代目が再建した頃に波郷が訪ねて行ったようです。
1957年当時と現在の違うところは、
・当時は店先で獣の解体を行っていたのに対し、現在は丹波・岐阜などの産地でさばいて送ってくれること。
・店先に吊るされている獣が、現在は剥製で当時は本物だったこと。それも当時は夥しい数の獣が吊るしてあります。
今でも、この御店の前を通ると、剥製でもギョッとしますけれどね。
「猪吊れば夜風川風吹きさらす」
やはり猪鍋は冬の風物ですねえ。
寒さはこれからが本番です。お疲れ気味の方は、現在でも御盛業ですので、この御店を訪ねてみてはいかがでしょう。
追伸
新年2日より「ちんや」は通常営業いたしております。どうぞ、ご利用下さいませ。
本日も最後まで読んで下さって、ありがとうございました。御蔭様にて1.403日連続更新を達成しました。
毎度のご愛読に感謝いたします。浅草「ちんや」六代目の、住吉史彦でした。
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